揺蕩う

生々しいんだけど ページ17

「和田さん、お腹空いた」


「いや、自由か(笑)」


「A〜、ただいま。……ごめんね」



Aの横にダイブして頭を撫でれば、少しだけ身じろいで。

腫れた瞼とか、まだ赤い頬とか、ぎゅっと握り締められた白い拳とか、

誰かを思う気持ちがただ一生懸命過ぎただけなんだよね。
俺ら頭悪いからさ、要領よくずる賢い事なんか出来ないし。



そっと撫でた頬はまだ熱を持っていて、小さく吐き出される寝息になんだか安心する自分がいる。



「…なんか、生々しいんだけど」


「和田も寝よ、」


「は？うわ、お前っ」


和田の腕を無理やり引っ張って引き込むと、倒れた身体がAの横にダイブする。
セミダブルのベッドに三人はちょっとキツキツで、
それでもAを真ん中にして寝転べば、あの頃の時みたいにキラキラとした気持ちが蘇る。


「せっま！」


「いーじゃん。昔は屋上とかでよく三人で昼寝したじゃん」


「いや、屋上とこのベッド、収容人数のキャパ違い過ぎるだろ」



なんて文句をつけながらも、Aの介抱疲れなのか一度目を閉じた和田はそのまますぐに寝息を零し始めて。

二つの寝息と、ぎゅうぎゅうの寝床。
なんだかひどく落ち着いて、その日は久しぶりにいい夢を見た気がした。

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