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02#煢然たる ページ3

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「――。」



眠りから目覚める虚弱な少年。何かに導かれるように、すっと瞳を開けた。
仄かに輝く月が見える。

葉が舞い落ちる音すら聞こえるほど静かな寝殿造内。母も父も、家人も、皆眠りについているのだろう。


しんと静まり返る、広い広い寝殿。

人々がバタバタと騒がしい日中は鬱陶しくて嫌いだが、こうも静かだと、より一層、自分は孤独であると感じる。


――淋しい、とは。

思わない訳ではない。

そう思ったところで、淋しさを埋めてくれる人など何処にも居ない事は分かりきっているのだから――最初から期待せずに過ごせば良い。

少年は、頭ではそう分かっていても、心が、体が、優しさを求めてしまう。



「・・・母上」



か細い声を漏らし、温もりを求めるように、自分に掛けられた布団に強くしがみついた。

その姿は、母からの愛情を期待する、まさしく子供そのもので、いたく滑稽であった。



「あら・・・、あらあら。」

「ッ!、、?!」



困惑し、気恥しく狼狽える女の声がした。

慌てて上半身を起こし、布団を足元に向かって放り投げた。

何と恥ずかしい。顔を真っ赤に染め、失態を後悔する。滑稽な姿を、母上に見られ――。



(――否、これは・・・母上では・・・)



冷静に考えてみれば、あれは母上とは違う女人の声だった。というか、母上よりもかなり幼い。恐る恐る、ゆっくりと顔を上げる。



「わ、わたしは…あなたの…あなたの、おかあさまでは、ないわ、わたしは――・・・Aよ、A・・・」

「・・・――。」



声の主の姿に、息を呑んだ。
其奴は庭園を背後に、ぽつりと立っていた。

形がぼやけていて、目や鼻が、何処にあるのか分からない。ぼんやりかすんで薄い光を放ち、ろうそくの炎のように揺れている。それはまるで月のように。



「――気味が、悪い」



顔を顰めてそう言う少年の方へ、目の前の“ 誰か”は歩み寄って行く。

雲の上を歩くようにふわふわと、少しづつ。



「・・・なんだお前は・・・来るな・・・!」



逃げようにも、立ち上がるだけで目眩がし、息が上がり、ろくに歩けない事を、脳が理解しているので身体が動こうとしない。

近づくほどに相手の顔がはっきり見えていく。
薄らと微笑んでいるように見える。

目の前の“ 誰か”は、少年の頬へと、徐ろに手を差し伸べた。



「あなたはとても きれい だわ」



――――――。



「――――・・・は?」

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佐賀出身の海苔 - 絵ってどうやって書いてるんですか? (2021年11月18日 20時) (レス) @page2 id: 15b86e3eec (このIDを非表示/違反報告)
翡翠 - また投稿を再開してくださって嬉しいです!消されたのかと思って必死に探した甲斐がありました!こんなに面白い作品をかけるのは貴方だけです…! (2020年10月6日 18時) (レス) id: 9fc4b0a5df (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:玲瓏 | 作成日時:2020年6月9日 18時

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