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01#咲くは、華 ページ2

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少年は、陽の光が憎かった。


此の世の全てを美しく輝かせた白い光は――流れる川に、揺れる葉に、可憐な花に――命を宿らせる力を持っているようだった。

されども、光は少年に触れることはない。
少年に、命を宿すことはない。

まだ十歳にも満たない貴族の子。生まれつき体が弱く、つい先日、愁然とした医師から“二十歳までに死ぬ”と告げられた。

息をすれば肺が締まり、咳をすれば血を吐く。

すべての人が当たり前にできる“呼吸”が、この少年には到底難しいことだった。



少年は、今日も陽の光を憎む。





❀✿





「何故、外へ出てはいけないのですか」


布団の上に弱々しく座る少年は、己の母親に問う。母親は「しょうがないでしょう、体が弱いのだから」と苛立たしげに答えた。

もはや母親に、子を想う気持ちを感じられない。


子というものは、不思議と、親の考えていることが、まるで本にでもそう書いてあるかのように、分かってしまうものだ。


目の前にいる自分の“親”は、自分を鬱陶しく思っている。


育てたところで、死ぬ未来は変わらない。
跡を継ぐことも、子を作ることもできない。
それならば、それならば。もう殺してしまえれば。

嗚呼、面倒臭い。


――――――“これ”が、ひしひしと伝わってくるのだ。




少年に在るものは “苦痛” “憎悪”

そして、 “孤独” 。



少年をその場に置いて、母親は立ち去った。
食事の時間だと、軽やかな足取りでその場を去っていった。
少年は心に溢れた悲しさを、悔しさを、押し殺すように布団へと潜り込み、弱々しく呟く。



「…生きてやりたい」



彼なりの小さな抵抗。
死を望まれているのなら、抗って、ただ生きていたいと願った。

――――少しずつ暖まっていく寝床。

次第に瞼が重くなる。

意識を手放す心地良さに身を任せようと、そっと目を閉じた。




「…………」




「………あなた……かわ……そう…」




「…………?」




ぼんやりと、何か不思議な気配――何かの声が――した気がするが、少年はそのまま、眠りに落ちていった――――。





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02#煢然たる→←【第一幕】



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佐賀出身の海苔 - 絵ってどうやって書いてるんですか? (2021年11月18日 20時) (レス) @page2 id: 15b86e3eec (このIDを非表示/違反報告)
翡翠 - また投稿を再開してくださって嬉しいです!消されたのかと思って必死に探した甲斐がありました!こんなに面白い作品をかけるのは貴方だけです…! (2020年10月6日 18時) (レス) id: 9fc4b0a5df (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:玲瓏 | 作成日時:2020年6月9日 18時

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