【TOKAI】無敵【YUYAMI】

26（Ｍ side） ページ29

じゃんけんで勝ったのは千葉だった。


僕が1番ないなと思っていた男だった。むしろ千葉以外なら誰にでもAを任せてみようと思えたのに。




…と、千葉に失礼すぎる感想を抱きつつ和室にいるAを呼びに行く。








「A、決まったよ」

「……」

「…ハア、こんなときまで仕事しなくたっていいのに」





和室の扉をあけると、がっちりとイヤホンをしてパソコンと向き合うAの姿。画面を見る限り、何かのデザインをしているようだ。この前言ってた北打ちのグッズかな？

Aは作業するとき 爆音で音楽をかける癖がある。たぶん僕の声なんて全然聞こえてなくて、自分の世界に入り込んでる。



肩を叩くと、びくりと背中が揺れた。
イヤホンを外すその仕草がすきなんだ、と 昔としみつが言っていたことを思い出す。確かに、生まれて初めて動くものを見ましたみたいな顔してこちらを見るAは、少し可愛いかもしれない。





「A、決まったよ今日のディナーの相手」

「うん」

「あれ、意外と素直に受け入れる体勢だね」

「まあ元凶は私の発言だしね」

「喜びな、相手は千葉だよ」

「千葉！1番話聞き流しそうな奴になったなあ〜」



…そんなことを言いながら、心底安心したような顔をするA。

嬉しいんでしょ、真剣に 辛かったね俺がどうにかしてあげたいと言ってくれるような相手じゃなくて。めちゃくちゃに安心してるんでしょ。

まあ、さすがにそこまでの意地悪は言わないけど。






「行っておいで。俺らは別の場所行くから」

「…チクショー、絶対夜食とか言って数人夜中に連れ出してやる」

「別に喜ぶ男ばっかだからいいんじゃない？」




Aの瞳が揺れる。
結局意地悪しちゃってるなあ俺。
そういうこと言われるのが、Aは1番嫌いだって、分かっているのに。






「ほら準備して！千葉が待ってるよ！」

「めちゃくちゃ高い飯奢らせよっと！！！」








千葉ーーーー！！！カメラを持て！！！出陣じゃーー！！！！！！と大声で叫ぶA。

千葉以外のみんなは複雑な表情をしていたが、千葉で良かったとも思っていそうだった。

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