第201話：彼氏 ページ7
.
「へぇー、彼氏いないんだ？まぁ生娘だもんな」
「此処があーちゃんの病室の廊下前じゃなければあなたを蹴ってましたよ、渡海先生。」
「恐ろしい部下を持ったもんだな俺も」
「色んな意味で恐ろしい上司を持ちましたよ私は！！」
ぎゃん、とAは一吠えしたが、渡海はその様すら愉しそうに眺めている。
ああ、そうだった。本来、梓紗の担当医はこの悪魔だった。
いつもは来ないくせに、とんでもないタイミングで梓紗の病室の廊下前に居たもんだ。
おかげで梓紗と話していた一連の会話を盗み聞きされた。
渡海からは「盗み聞きじゃなくて聞こえただけだ」と訂正を求められたが同じようなものである。
「彼氏いないんだ？ってわざとらしく言いますねえ。居ないことわかってるでしょ」
「俺じゃなくてもわかるだろ」
なんだとテメー、と、Aでなければ言っていただろう。
だが、Aにとっても、渡海の今回の言い分には同意見である。
くるりとAは踵を返し、梓紗の病室から遠ざかっていく。
渡海も彼女と向かう場所は同様であり、並ぶように二人して廊下を渡る。
「先生だって彼女居ないでしょ。居たら吃驚します」
「吃驚？」
「そも、渡海先生が色恋沙汰に身を染めるのを想像できない、という偏見があります。私には。」
だから、吃驚する。
その前に、渡海に恋人が居る気配は見えない。正直「仕事」が恋人な気がする。
こんなのに恋人が出来たとしても、相手は寂しい思いをするばかりだろう。
失礼極まりないのは承知の上であるが、渡海に対する印象はこんなもんだ。
渡海の次の言葉が出る前に、Aはぺらぺらと言葉を続ける。
「何のためにお金集めてるのか知りませんけど、少なくとも恋人のためとかじゃないでしょう」
「……。」
「あっ…でも、そういえば。」
ふと、Aは足を止めた。渡海もAより一歩、二歩先で歩を止めて、彼女へ振り返る。
「先生ってなんでそんなにお金が必要なんですか？」
教え子は、根本的な疑問に首を傾げた。
「まさか拝金主義じゃないですもんね？渡海先生って。そんなタイプには思えないですし…。
蓄財する為じゃなくて、ちゃんとした買収目的かな、って思ったんですけど。」
―――いつも思うが、よく喋る奴だな。
渡海は彼女の言葉を受け入れながら、心底そう思った。
Aは渡海の表情の僅かな変化に気付かないまま、続ける。
「何か欲しいものでもあるんですか？」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1836人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
理音(プロフ) - 更新して欲しいです！！待ってます！！ (7月16日 23時) (
レス) id: d2e2ccbd11 (このIDを非表示/違反報告)
狐海(プロフ) - 更新楽しみに待ってます…！ずっと！！待ってます！！ (2023年4月20日 18時) (レス) id: ce22822f8d (このIDを非表示/違反報告)
理音(プロフ) - 続き気になります！更新楽しみにしています！ (2022年5月13日 19時) (レス) id: d1bb6ccd48 (このIDを非表示/違反報告)
積み荷 - すごく面白くて続きが気になって三回もコメントするDS民ですこんばんは！もう更新はされないんでしょうか…きっとお忙しいのだと思います、事情も知らない外野ですがなんか応援してます！ (2020年2月19日 1時) (レス) id: 03bfdf54f9 (このIDを非表示/違反報告)
昇降機 - めちゃめちゃ面白いですいつまででも待ってます…！原作も読みましたが面白かったです(影響受けた)続きを楽しみにしてます…！ (2020年2月5日 20時) (レス) id: 03bfdf54f9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：K | 作成日時：2018年7月21日 20時
