第193話:詳細2 ページ48
「そっか」
世良はその詳細に追及することはせず、ただその一言のみ落とす。
ひとまずの安堵。世良の表情はそれそのもので、非常に穏やかだ。
「……うん」
それが眩しく見えたのだ。Aは太陽の直射から逃れるように目を細めて、寂しげに笑う。
■
「―――そうですか」
「驚きました。まさか医者とは…」
「彼女の祖父の血が強いのかもしれません。彼も素晴らしい医者です。」
「ええ。 ……あの、ひとつお伺いしても。」
「はい、なんでしょう。」
「彼女はその祖父の存在は?」
「…。 私の知る限りでは、恐らく気づいていない。知らない、と言った方が正しいでしょう。」
「えっ…?では、彼女の今は、天涯孤独状態だと?」
「…はい。」
「なぜ…、そんな……」
「…彼女の父の…願いです。」
「………。」
「………。」
「…よく似ていらっしゃいました。本当に…、面影がある…。」
最近まで、彼の命日すら分からなかった、と、スーツ姿の男が目を伏せて口元を緩ませる。
後悔…というよりは、無念だろう。だが、彼がそう願ったのであれば、仕方がない。
そもそも、とても親しい真柄でもなかった。
……仕事の関係で、顔を合わせることはあった。会話を交わすことも。
たまに飲みにいってたりも、あった。
だが、遠い遠い過去だ。今更振り返って感傷に浸るなど、今の田村にあってはならない。
本人にもその余裕はないはずだ。
「…脱線致しましたね、すみません。では失礼。」
「…ええ、お気をつけて。」
黒革の一人用ソファから立ち上がり、田村は佐伯に頭を軽く下げたのち、
扉の前――廊下にて待機していたスーツ姿の男数人に囲まれるようにして病院を去っていく。
佐伯は日の落ちた空を眺める。さあ、食事へと赴かなければ。
.
「お前さあ」
「ん?」
「なんで寮に移らないの」
「…えっ、珍しいね、速水くんがそういうの気に掛けるなんて」
「あのなぁ…。別に他意は無い。でも効率悪いだろ。」
「うーん…」
==作者==
>>圧倒的時間の無さ<<
完全に1日1回は更新するという自分ルールが廃棄されてる状態です。
けれども、何年かかろうと、どれだけ続こうと、私はこの小説を書き切るのだ…(笑)
そしてとっても今更ながらブラックペアンロスが…(笑)
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snake20xjapan04(プロフ) - めっちゃ面白いです! (2018年9月22日 11時) (レス) id: b0aeedf16f (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - 橘花さん» とてもわかります(;ω;) 確かに続編あったら…とも思うんですが(海堂シリーズ読破者としては特に!)、渡海先生…渡海先生…orzってなります…(笑) へへへっ、自分のペースでもりもりやっていきます!!ありがとうございます! そうなのよ奥さん!不思議ね!! (2018年7月22日 0時) (レス) id: f4cc5215a6 (このIDを非表示/違反報告)
橘花(プロフ) - ペアンロスわかります。。ベイストで続編うんぬんの話を聞いてさらにロス再燃。。褒めて欲しい主人公ちゃんと甘えを逃した渡海先生の肩落ち加減がかわいいです…!Kさんがたのしく書けることを祈ってます。追い込まないで…。で、2人まだ付き合ってないの奥さん?? (2018年7月19日 20時) (レス) id: 2798c105f2 (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - 橘花さん» とても細かい所まで着目してくださっている!!!作者としてありがたいとこの上ありません(*´Д`*) (そして再びご返答遅れてしまいすみませんorz コメント自体に気づきませんでしたorzいつもありがとうございます…!) (2018年7月19日 13時) (レス) id: f4cc5215a6 (このIDを非表示/違反報告)
橘花(プロフ) - 緊張してキモオタみたいな喋り方しそうですが、よければぜひ♪私は描写、丁寧できれいな言葉でだいすきです。その傾向なかったり…?!(笑)渡海先生の問答で「美しい…」の答えに「…はい」の…がすてきです(マニアック)案外ノリとテンポのいい2人がすきです! (2018年7月11日 19時) (レス) id: 2798c105f2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:K | 作成日時:2018年6月14日 0時