私のこと ページ4
「…暫くの間だけですからね。そのまま住み着かないでくださいよ。」
仕方なく発したその言葉に、太宰さんは目を輝かせた。
「有難う!」
そう言って抱き着いて来ようとした太宰さんがピタリと動きを止めたので、何事かと思い目を見張ると。
「そう云えば私…聞いてない。君の名前。」
…あっ、本当だ。
自己紹介もしないまま家に住まわせる事決めちゃうとか私、大丈夫か…?
「えっと…私の名前は、小山Aです。高3ですが、大学には行かないので受験生ではないです。」
「よろしくね、A。あとさ、堅苦しいからやめない?」
「何を、ですか?」
「ほら、その敬語。これから暫く一緒に住むんだからさ、もっと馴れ馴れしくしてもいいと思うんだよね。」
た、確かにそうかも…
「な、なら、えっと…よろしく、太宰さん!」
少しぎこちない笑顔で挨拶してみると太宰さんは満足してくれたらしく、ニコリと笑った。
「ふふっ、よろしく。」
そのキリッとした目を細めて微笑む太宰さんに、不覚にも一瞬ドキリとする。
やばい、格好良い。これがイケメンか…
「ところでA…A?」
「あっ、な、何?」
いけないいけない。一瞬太宰さんに見とれてボーッとしちゃってた。
「Aは、1人暮らしなの?それにしては随分と広いようだけど…」
首を傾げる太宰さんに、私は少し考えてから答える。
「えっと…本当は両親と弟がいるんですけど、今は海外旅行に行ってるんです。その内帰ってきますよ。」
「ふぅん。その内、ねぇ…」
すべてを見透かすかのような目で見詰めてくる太宰さんから、私はさっと目を逸らす。暫く考えていたようだけど、「ま、いいや」と伸びをした。
「じゃ、もしそのご家族が帰って来たら、私は去ることにするよ。」
帰って来たら…そんな日が来れば良いのだけれど。なんて、口にも表情にも出しはしない。お互いの情報を知れば知るほど、情が移る。そうなった時、傷付くのは私だ。
「うん、そうしてくれると嬉しい。」
何とか口角を上げてそう言うと、太宰さんも笑い返してくれた。
その後は二人でカップ麺を食べて(誰かが来ると知っていたらもっとちゃんと準備してた)、それぞれお風呂に入って、私はベッド、太宰さんはソファで寝た。
何でだろう。太宰さんが居るというだけで、それ以外はいつもと殆ど変わらない夜のはずなのに、一人じゃないというだけでここまで寂しさが紛れるなんて。
怖い。明日かもしれない太宰さんとの別れが…怖い。
74人がお気に入り
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
この作品が参加のイベント ( イベント作成 )
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
空ノ寂(プロフ) - 七葉さん» ありがとうございます、とても嬉しいです!これからも、応援よろしくお願いします! (2017年12月4日 0時) (レス) id: 6114dac4c8 (このIDを非表示/違反報告)
七葉 - 凄く面白いです!更新頑張ってください!応援してます! (2017年12月3日 23時) (レス) id: 88ee75b376 (このIDを非表示/違反報告)
空ノ寂(プロフ) - uoxCAnz4DFHXBiTさん» ありがとうございます!!そう言っていただけて光栄ですっ!これからも、応援宜しくお願い致します! (2017年11月12日 22時) (レス) id: 6114dac4c8 (このIDを非表示/違反報告)
uoxCAnz4DFHXBiT(プロフ) - めっちゃ面白い!!! (2017年11月12日 22時) (レス) id: 27924cfedd (このIDを非表示/違反報告)
空ノ寂(プロフ) - 洋梨さん» ありがとうございます(T^T)とても、励みになります!これからも頑張って更新していきますので、応援宜しくお願い致します! (2017年11月11日 23時) (レス) id: 6114dac4c8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:空ノ寂 | 作成日時:2017年11月5日 15時