心のブレーキ ページ11
凛の部屋から出勤した。
凛は何も無かったかのように、
いつも通り、
ううん、
それ以上に優しかった。
その笑顔を見る度に、
申し訳なさと、
無理させているんだろうなって事に苦しくなった…
これで良かったの…？
私がした事は本当に許されていいの？
仕事中も集中出来ずに、
ずっとモヤモヤしたままだった。
百合子「どうかした？元気ないよね今日。」
A「ううん、何でもないよ？ちょっと寝不足なの。」
彼氏同士も友達だっていう、
あまりにも近い存在の百合子ちゃんには、
話せなかった。
元カレと浮気して、
凛を傷付けてしまったなんて…
百合子「あっ、また凛君家泊まったんだ。笑」
A「うん、そうなの。」
百合子「もう一緒に住んじゃえばいいのに。」
A「うーん、フフフ。」
笑って誤魔化すしか出来なかった。
やっと仕事が終わり、
会社を出たところでスマホを見ると、
知らない番号から着信があっていた。
んー、誰だろう？
大事な用件ならまた掛かってくるよね。
そう思っていると、
また同じ番号からの着信が。
A「…はい」
恐る恐る出てみると、
紫耀「A？紫耀だよ…」
電話越しのその声に、
上手く息が出来ない。
大好きだった電話越しの声。
紫耀は知らないでしょ？
低くて少し掠れている、
この声が好きだったって事…
その声に私は未だに胸が締め付けられている。
まるで何かの魔法にでも
かけられてしまったかのように、
紫耀だけでいっぱいになってしまう。
頭では、
ちゃんとダメな事と分かっているんだけど、
心が言う事を聞かないの…
ドキドキしてしまって、
上手く声さえも出せない。
ただ、
駅に向かう道の途中、
その場で立ち止まり、
スマホを耳に当てていた。
紫耀「あれ？A？」
A「何で…」
何故番号を？
あー、神宮寺君か…
でもなんで？なんで電話して来たの？
やめてよ、
これ以上凛を裏切りたくないの。
電話なんてして来ないで。
そう言いたくても、声にならず、
ただ涙だけが溢れてくる。
きっと心がブレーキをかけているんだ…
紫耀「…大丈夫？A？」
優しく名前を呼ばないで。
そんな声で話さないで…
お願い、
ダメなの…
気持ちが、
抑えきれなくなってしまうから…
昨日のキスで、
一瞬にして心を呼び戻されてしまった事に、
わざと気付かないフリをしてたのに…
紫耀「会いたい…」
その言葉に、
A「…紫耀」
また私は名前を呼んでしまっていた。
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作者名：ひろみ
| 作成日時：2021年8月7日 1時
