3年の値段 ページ4
「これから宜しく頼むね。期間は恐らく3年。早まるかもしれないし、伸びるかもしれない。それと、君の背負っている事情はママから聞いたよ？これから、君の3年分の人生を私が買い取ると言う事になるから、その背負っている全額払わせてもらうよ。」
そう言って、また微笑む男性。
「えっ？…全額ですか？」
嘘でしょ？そんな事いいの？
相当な額なんだけど…
「当たり前だよ。こんな仕事内容だし、私だってそのくらい払って当然なんだよ？だから、これは、お互いのメリットが一致したという事だよ。」
「Aちゃん？これで3年後は自由になれるわ。幸せを夢見る、普通の女の子として生きていきなさい。それと、今日でここの店は終わりよ？今までありがとう。」
「ありがとうございます。」
ママと男性に深くお辞儀をした。
「さぁ、今日からお仕事よ。着替えてらっしゃい？」
「外で待ってるからね？私の車で向かおう。」
VIPルームを出て、更衣室へ。
私服に着替えながら、ここで働いた日々が走馬灯の様に蘇って来た。
こんな形でここを去ることになるなんて。
5年…。
正直、長かった。
毎日、毎日、自分を奮い立たせ、必死に働いて来た。
でも、ここで働けて良かった。
色々な人との関わりが私を成長させてくれた。
同僚の人達も、とてもいい人ばかりで、お姉さんや妹が出来たみたいで、楽しかった。
まだ営業時間で直接挨拶が出来ない事が心残りだな。
簡単だけど、置き手紙を残し更衣室を後にした。
裏口から外へ出ると、ママが立っていた。
私の両手をそっと握り、
「本当に娘のように思っているから…。これからも何かあれば遠慮せず私を頼って来なさいね？」
「はい…。私もママの事を母のように思っていますので、何も無くても会いに来ます。」
「幸せになる事を怖がらないで。幸せになっていいの。当然なんだよ？それだけ忘れないで。」
「はい…。」
「社長さんがお待ちよ？じゃあまたね。」
「はい…。」
ママは、そっと私の背中を押してくれた。
ガチャっ。
後部座席のドアを開け、車に乗り込んだ。
「すみません、お待たせ致しました。」
「いい光景だったよ。本当の親子みたいだった。」
「はい。本当に母のように思っています。」
「そうか。そんな人がいてくれて良かったね。」
「はい。」
車が発進した。
後ろを振り返ると、ママが手を振ってくれている。
私も振り返り、ママが見えなくなるまで手を振った。
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作者名：ひろみ
| 作成日時：2018年11月18日 22時
