180 ページ10
.
新海「一通り頭部外傷の患者の評価を終えたので･･･翔北に戻ります」
新海先生は、普段脳外科医としてお世話になっていて。
彼がここを離れたら･･･私ひとりだけになってしまう。
「来てくれてほんとにありがとう･･･広紀くん、無事でよかった。」
新海「Aちゃん･･･」
「･･･自分が情けなくて。白石先生の代わりに指揮を執らなくちゃいけないのに。患者だけじゃなくて、スタッフの命もあずかってるって･･･わかってたはずなのに。」
新海「っ･･･」
ここで新海先生を困らせてどうする。
分かっているつもりなのに、口は要らないことばかり話す。
〈ヘリ戻りました〉
新海「あぁっ･･･じゃあ。」
私は、ヘリに戻っていく新海先生の顔を見ることが出来なかった。
* *
新海side
─────広紀くん、無事でよかった。
彼女が言った言葉が、頭の中で無限ループする。
普段あまり名前で呼んでくれない彼女が、一度だけ言ったその三文字。
それだけで、彼女のメンタルが今不安定だってことがわかる。
大切な仲間が──何年も寄り添ってきた仲間が、
命の危機に曝されているなんて。
藤川先生だけじゃない。
藍沢と連絡が取れなくなった時のAちゃんは
───俺の知っている彼女ではなかった。
少し抜けてて、それでも仕事に私情は挟まない。
そんなAちゃんが崩れた瞬間。
そんなにも大事な仲間が────。
新海「藍沢･･･ちゃんと守ってやれよ、」
ヘリの中でぽつり、呟いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3500人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：なつ
| 作成日時：2017年9月18日 22時
