111話 ページ15
夜久side
プルルル……プルルル……
耳に響くのは、その単調なリズムだけ。
ある程度、繰り返されると、留守番電話サービスに切り替わる。
夜久「……出ない……」
不安が押し寄せる。
こんな黙ってAが消えるなんて、思ってなかった。
もう一生会えない気さえしてきて、おかしくなりそう。
っ、なんで……!
夜久「なんで出ねぇんだよ……!」
もう1度、通話ボタンを押す。
……繋がらない。
不安そうに俺を見つめるチームメイト。
心配しているのは俺ではなく、もちろんAの事。
体育館が静まり返る。
まだ涼しいはずなのに、外では蝉が鳴き始めた。
静寂を破ったのは、意外にも、研磨だった。
孤爪「……クロ。
何か、知ってるんじゃないの?」
黒尾「……」
黒尾は俯いたまま、黙っている。
孤爪「早退する前、最後に話したのはクロでしょ?
A、何か言ってたんだじゃないの?」
そういえば、俺も見た気がする。
黒尾が何かを言って、Aはそれを今の黒尾のように、俯いて、黙って聞いていた。
海「黒尾……。
何か知ってるんなら、話してほしい」
海が体を黒尾に向ける。
俺の目も、自然と黒尾の方を見ていた。
黒尾「……アイツ、ぼーっとしてたから、理由を聞いたんだ。
そしたら、なんでもないって言われて……。
でも、そんな訳ないって思って、追求してる内にだんだんイライラしてきて、つい強い口調でAにいろいろ言っちゃって……。
それで、Aは……」
1度言葉が切れる。
黒尾は悔しそうに顔を歪めた。
黒尾「僕、しばらく休みますって言って、体育館を出ていった……。
俺のせい、だ」
否定も肯定も出来なかった。
原因は黒尾にあると考える事も可能。
でも、Aがそんな事で、部活を休むなんて思えない。
孤爪「……だったら、待つしかない」
えっ、と驚いた顔で、黒尾は研磨を見た。
俺も驚く。
孤爪「Aがどこにいるかなんて分からないし、電話も繋がらない。
俺達に成す術はない。
だったら、Aがいつ戻って来てもいいように、待つしかないよ」
山本「……そう、だな」
山本が力強く頷いた。
山本の隣で、福永も頷いている。
いつの間に、2年はこんなにも逞しくなったのだろうか。
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サクラ - Luneさん» ありがとうございます!更新頑張ります!! (2019年7月30日 13時) (レス) id: 9cd941d146 (このIDを非表示/違反報告)
Lune - こういう感じの作品が見たかった..(感動)もう最高すぎです!面白いし、もうなんかとにかく好きです← 更新頑張ってください!応援しております!! (2019年7月27日 23時) (レス) id: 662403215f (このIDを非表示/違反報告)
サクラ - キラリさん» ありがとうございます!応援に応えられるよう、頑張りますね! (2019年3月27日 7時) (レス) id: 086eed9c24 (このIDを非表示/違反報告)
キラリ(プロフ) - あの......好きです!笑 これからも頑張って下さい!応援してます! (2019年3月26日 3時) (レス) id: 203d4207d9 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ - ファンミさん» ありがとうございます!これからもよろしくお願いします! (2019年3月23日 20時) (レス) id: 086eed9c24 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:サクラ | 作成日時:2019年2月16日 16時