恋彼らの片思い2 (ページ14)

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キッチンから愛をこめて　まつにぃページ14

「あぁ、アイツ？食にもうるせぇんだよなぁ」
「でしょ。元カレに聞くのが一番だと思って」

太一からの電話は
アイツの食の好みについて。
どうやら番組でアイツのためにメシを作るらしい。

リーダーと地方ロケに行ったのに
諸々の事情でそのVはお蔵入り。
そのお詫び、という名目で
俺らがこの長い間にお世話になった農家さんたちから
食材をお取り寄せして
アイツの好きなメニューを調理して配達するんだと。
番組的には、お取り寄せの紹介することで
以前お世話になったことの恩返しもできる
なかなかいい企画。

「まぁな」
「麻婆豆腐とチャーハンが食べたいんだって」
「それなら・・・」

頭フル回転させて
アイツの好みの味付けを伝えると

「さすが。よくご存知で」

太一が笑った。

「うるせぇ」

よく知ってるどころじゃない。
アイツがあれだけの食いしん坊になったのは
俺がメシ作ってやってたから。

あの頃、美味いもん食べた時の反応が
あまりにも可愛らしくて
腕によりをかけて料理したし
いい店があれば連れて行って食わせてた。

『おいひぃれふぅ』

ってほっぺたぱんぱんにしての見ると
何でも食わせてやりたくなるんだよなぁ。

「自分で作ってやりたいでしょ」
「そんなこたねぇけど」
「素直じゃないねぇ。奪っちゃえば？」
「アホ。切るぞ」
「あはは、ごめん、ごめん。ありがとね」
「ん。まぁ、美味いもん食わしてやってよ」
「りょーかい。松岡の愛情も入れとくね」

いらんこと言って太一からの電話は切れた。

・・・今さら奪えるか。

自分の口から溢れた独り言に思わず苦笑い。

引きずってるつもりはないけど
相も変わらず独り身でいるのは
アイツ以上に愛せる相手に巡り会えてないから。
・・・こーゆーの、引きずってるって言うのか。
らしくねぇなぁ、俺。

「やるかぁ」

起き上がってキッチンへ向かう。
冷蔵庫開けたら、材料は揃ってた。
久しぶりに作ってみようかな。
最高級の食材はなくても
アイツ好みの味を出せる自信はある。
たぶんらアイツのダンナより。

ま、食わせてやる機会なんてもうないだろうけど。

邪念を振り払うように集中すると
いつも通りに美味そうな麻婆豆腐の出来上がり。
熱々をよそってテーブルに運ぶ。
炊いてあった白メシと一緒に並べて

「いただきます｣

手を合わせた。
ひとくち食べるとやっぱり上出来。

「おいひぃ」

アイツの笑顔が思い浮かんだ。

あーあ。やっぱりまだまだ俺も・・・。