明日 (ページ19)

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髭、その後　りゅうページ19

｢うわぁ・・・｣

朝イチの情報番組が終わって
電源入れたスマホを見ると

｢今すぐ髭剃って｣

怒った声で忠義から留守電が入ってた。
自分が伸ばせ言うたやないの。
なんで怒ってはるん？
メイク落としながらポチポチ確認してみたら
他にも後輩くんやらお友達からメッセージが何件も。
大体は髭が似合う、素敵！ってお褒めの言葉。
飲みやご飯のお誘いや
あからさまにアプローチしてきてる子までいる。

｢あらまぁ｣

予想外の反応。
お休みが続いたし、忠義からのリクエストがあったから
伸ばしてみただけやねんけど。
どうやらネットもざわついてるらしくて
某SNSではお髭の弁護士さんのお名前がトレンド入りしてはった。

身支度も終わったし
まぁ、ここはとりあえず忠義からってことで
直接電話を架けてみる。

コール3回鳴らないうちに

｢りゅう！髭っ！あかんっ｣

慌てた忠義の声。

｢何慌ててんの？｣
｢いいからっ。剃って！｣

いいからって何？

｢たつが伸ばして言うたんやないの｣

ちょっとイラっときて言い返す。

｢やってぇ・・・｣

今度はシュンとした声。

｢さっきからいろんなとこからメッセージくるんやもん｣

ん？

｢丸山くんの連絡先教えてって。
事務所の子ぉはさすがにないけど
知り合いの俳優さんやら女優さんやら・・・｣

ほぉ。

どうやら無下に断れんような方からも
メッセージが来てるらしい。
俺らの関係は大っぴらにできるもんじゃないからなぁ。

｢うぅぅっ。俺、どうしたらええねん｣

珍しく慌ててる忠義が可愛くて
思わずクスクス笑ってまった。

｢もぉっ。何がおかしいのっ｣
｢んー。たぁが慌ててはるから｣
｢俺の可愛いオクサマが狙われてるんやで？｣
｢そないにモテへんてぇ。珍しがられてるだけやろ｣
｢それでも心配なのっ｣

ね、お願い。髭剃ってぇ

甘えた声でお願いされたら
もぉ、言うこと聞いたるしかないやんなぁ。

｢今メイク落としたとこやし剃っとくよ｣

｢良かったぁ。あ。剃ったら写真送ってな｣
｢なんでよ｣
｢顔、見たい｣

｢それに、やっぱしりゅぅは可愛いほうがええねん｣

こないだのこと思い出したんか
ちょっと声が上擦ってるわ。

んふ。
なぁんかうれしいわぁ。

｢ほんじゃぁ、ちょっと待っててな｣
｢はぁい｣

一旦電話切って鏡に向かう。
ちょっと気にいってたのにな。

ジジジジ。

一枚刃が回り出す。

あ、もしかして俺のモテ期髭ん時だけ？
なぁんか、なぁ。

まぁ、ええか。

ダンナさんの仰せのままに。