明日 (ページ38)

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サンドイッチ　たつページ38

「なんや、空っぽやんけ」

中途半端な時間に来たコンビニ｡
おにぎりはほぼなくなってた。

「う。どーしよ」
「俺、サンドイッチにしよ」

隆平が卵サンドをカゴに入れた。
俺、パン好きやないし
仕方なく気分じゃないけど梅と昆布を手に取った。

おにぎりやからお茶やな。
ドリンクの前にはアホみたいにイチャコラするカップル。
「なんにするぅ？」
「え～、まぁくんはぁ？」
「俺、かおりんが選んだやつにするぅ」
「やだ、かおりん選べなぁい」
後ろに人がいる気配も察知しない。

めんどくさ。
手伸ばして扉を開けて、適当なヤツ掴んだら
女のほうがこっち見て

ちっ

舌打ちしやがった。
他人に舌打ちする女、嫌い。
俺だったら即別れる。

モヤモヤした気持ちで隆平を探すと
雑誌立ち読みしてる。
どうやらグルメ雑誌みたいで、幸せそうな顔してる。

うちの子、かわえぇ。
舌打ちする女なんかより、ずっとずっとかわえぇ。

隆平は冷たいカフェオレのパックでええかな。
たぶん卵サンドだけやと、足りひんて言うから
メロンパンもカゴに入れた。

さっきのカップルがレジでもたついてる。
どうやら彼氏のスマホのアプリがなかなか反応しないらしい。
キャッシュレスの盲点よな。
やっと支払いが済んだ頃には彼女も苦々しい顔してた。

こーゆーのはサッとせんと。
なんて思ったのに、肝心のスマホを車に置いてきた。
ヤッバ。恥ずかし。
慌てて財布、ポケットから取り出すと
横から手が伸びてきて
すすっとお支払いしてくれた。

「ありがと」
「ん？俺も食うんやし」

いつの間にか隣にいた隆平。

「行こか」
「うん」

単純なこと。それだけのこと。
簡単じゃなくて理屈でもないこと。

ドアを開けて外に出る時
ベビーカー押したママとすれ違った。

「どうぞ」

って恭しくドア押さえる隆平に

「ありがとうございます」

ママは笑顔でお辞儀する。

それだけのこと。
だけど、ふんわり心があたたかくなること。
幸せの源は笑った顔だ。

この子とふたりで生きていく。

俺は、きっと最期の一瞬まで笑っていられると思う。

例えばこの先
情けない姿でのたうち回ることがあったとしても
この子はきっと一緒に泣いてもくれる。

仕事に向かうワンボックス。
並んで座って袋を開ける。

卵サンドとカフェオレに勝手に選んだメロンパン。

「ありがとう」

って受けとって

「メロンパンと迷ったのわかってたん？」

ふふふ、って笑う。

俺もふふふ、って笑っておにぎりに齧りついた。