恋 彼らの片思い

まつにぃの場合　22 ページ37

いろーんなことがあった１年がすぎて
元号も変わろうかって時。

相変わらず俺とマルは同じ居酒屋でグラス合わせてる。

｢なぁ、忠はヤキモチ妬かねぇの？｣
｢たまには刺激与えんとねぇ｣

オイ、オマエはいつからそんな悪い顔もするようになった？

｢俺を当て馬にしようなんざ100年早ぇよ｣

ふふふ。アカン？

俺を見上げる潤んだ目。
酔ったマルは色っぽい。
わかっててもドキッとする。
忠と一緒になってからコイツ、えっろい顔するようになった。
コイツのこれって天然？天然だよなぁ？
襲うぞ、コラ。


マルは俺が辛い時期には何度も連絡してくれて
それとなく気づかってくれてた。

｢元気にしてはった？｣
って聞くから
｢大丈夫だよ｣
って俺も見栄はって言った。

ホントは大丈夫じゃなくてもマルに言ったら
大丈夫になるような気がした。
俺はあのふにゃんとした笑い顔に何度も救われた。

片思いもいいもんだ。
マルが笑ってる。
それだけでいい。
きっといつかは俺もまた誰かに恋をする。
それまで、な。

｢あ。俺、今度のパーティはたつと併せで行きます｣
｢ほぉん。それで？｣
｢一応、ご報告です｣
｢報告ってなんだよ｣
｢やって、たつのものって宣言するようなもんですからねぇ｣
｢俺、関係ねぇもん。諦めねぇって言ったろ？｣
｢ありがたいですけどぉ｣
｢じゃぁ、いいじゃねぇかよ｣

いいのか？自分でも思うけど。
併せで来たやつらへの手出しは御法度。
うちの事務所の暗黙の了解。
デカイパーティなんかで事務所の連中が集まる席で
カップルは洋服のどっかを『併せ』てくるのがお約束。
『併せ』できたカップルは公認になるってやつ。

ついにマルも公認の嫁扱い・・・。

｢忠に一発かましとくかぁ｣
俺が言ったら

｢もぉ。手荒なことせんでくださいね｣
困った顔してるけど、ちょっと嬉しそう。

あーあ。なんだかなぁ。
でも、まぁ、いいや。

美味そうに唐揚げ頬張るマルを見てたら
俺も幸せな気持ちになった。

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