恋 彼らの片思い

まつにぃの場合　21 ページ36

｢それからもうひとつ。
あの人の話したばかりやから話辛いけど｣

話辛い、というわりにははにかんだ笑顔。
嫌な予感しかしねぇ。

｢たつ・・・オークラとお付き合いしてます｣
｢あぁ。やっぱり｣
｢えっ。やっぱりってなんですの？｣
｢だって忠って昔っからオマエのこと大好きだったじゃん｣
｢それは、聞いてますけどぉ｣

ちっ。頬赤らめやがった。

｢オマエ、俺にノロケるわけ？｣
｢んふふ。そんなつもりじゃないですけどね｣
｢頼んねぇの好きになったな｣
｢そぉ見えるんですけどね、意外と男気あるんですよ？｣

うん。それは知ってる。
言わねぇけど。
根性あるってのは何度も一緒に仕事してるからわかってる。

忠はいつもマルの話ばっかりしてた。
俺とマルが付き合う前から。
マルちゃんが、マルちゃんがって
ドラマの時は『今日のマルちゃん』みたいに喋ってた。

忠の話に出てくるマルは俺と一緒の時とはまるで違っていて
はしゃいだり失敗したりアホなことばかりだった。
俺の前では、物静かだったし
『いい子、いいパートナー』
になることに必死になってたように見えた。
マルの天真爛漫なとこは残っていたけど
なんだか淋しかったのを覚えてる。

｢幸せか？｣
｢はい｣

俺の問いに笑顔で頷くマル。
ひとつも嘘のない笑顔。
やるじゃねぇか。小僧。
俺の可愛いマルに、今でも愛しくって仕方ねぇマルに
こんな飛びきりの笑顔させやがって。

｢俺、今のオマエが好きだ｣
｢んー。もぉ、なに言うてはるの｣
｢いや、いい笑顔しやがって。惚れ直したんだよ｣

諦めねぇよ？

目見て言ったら、
あのおれの好きな顔でふわんと笑った。

｢泣かされたら俺んとこ来いよ？｣
｢おん。ありがと、まつにぃ｣

そしたら今度こそ・・・。

ま、そんなこと、ねぇだろうけどな。
忠なら大丈夫。

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