爆発寸前 ページ15
一体、誰がこれ程最悪な状況をプログラミングしたのだろうか。
イヴァンか。
……うん、イヴァンかもしれない。
アーサーの注意が逸れ、太ももを押さえる力が弱まった。
Aはこの機を逃すかと躊躇なく足を持ち上げて思いきり金色の頭に踵を落とした。
意表を突かれたアーサーは低く呻いて頭を抑え込む。
どうやらかなりのダメージを食らったようだった。
快感の余韻に痺れる身体を無理に起こす。
頭の辺りにあった刺繍の綺麗なクッションを掴んで腰に当ててから、捲れていたドレスの裾を元に戻せば良いだけのことに気が付いた。
彼女の兄と距離を置いて見つめ合う。
最初は驚いていただけの本田の顔が、やがて怒りの色に染まっていった。
「……A、どうやら私は貴女の教育に失敗したようです」
「ッ……」
Aがごくりと喉を鳴らした。
その瞳には徐々に涙が溜まってゆく。
生温い空気の中、遠くの通りをパトカーのサイレンが通り過ぎた。
「男は狼だと、教えたはずでしょう?」
「……お兄様だって、男の人、です」
Aは俯きながら小声で口答えした。
彼女なりの精一杯の反抗なのだ。
その意図はちゃんと伝わったらしく、本田は不快そうに眉を潜めた。
「簡単に男の家に上がり込むような汚れた女に言われる覚えはありませんね」
「汚れて、ない……」
Aにとって兄は畏怖の象徴であり、恐怖そのものなのだ。
情がないと言ったら嘘にはなるけれど。
本田がふっと表情を緩め、穏やかな仕草でAに手を差し出した。
「まぁ、穢れは兄が落としてあげます。彼のことは忘れて、一緒に家へ帰ります」
ようやく意識が安定したアーサーは、起き上がりざまに奇妙な光景を見て太い眉を潜めた。
何だこりゃ。
飴とムチってやつか?
ぐちゃぐちゃに乱れた金糸の髪を手で軽く整え、ソファーから立ち上がる。
本田が彼を振り返った。
「本田、どうだ大事に育てた妹を寝取られる気持ちは」
「……寝取られてなどいない」
これが、今夜アーサーと本田が交わした初めての言葉だった。
こんな憎々し気なものになろうとは。
アーサーはクラクラする頭を押さえ、不敵に微笑みながら本田へと歩み寄った。
肩に手を置いて顔を覗き込むと、彼は苦虫を噛み潰したような表情になった。
――良いぜ、その顔。
「良いこと教えてやろうか」
爆弾をぶち込んでやる。
真赤な顔をして睨んでくるAを横目に、彼は本田の耳元で呟いた。
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夏(プロフ) - 続き気になります!面白いです!アーサーさんもかっこいいなぁ♪^^更新待ってます♪ (2016年3月2日 16時) (レス) id: e9bb4d3c3e (このIDを非表示/違反報告)
麗姫(プロフ) - 狂犬★兵部京介と白澤が心の拠り所(要は遊佐好き)さん» 言い訳みたいになるんですけど、なんか日本語で冠詞をつけてまで喋ったらくどくなるんで、さらっと言いやすい感じにしました。ご注意どうもですXD (2015年8月8日 18時) (レス) id: 61b5a6cbc1 (このIDを非表示/違反報告)
狂犬★兵部京介と白澤が心の拠り所(要は遊佐好き)(プロフ) - 『き も い で す か』の「old man」は「夫」という意味ですが、恐らく老人というような意味で使われたのでは…?その場合、「老人」は「an old man」ですよ。夫という意味でold manを使ったのでしたらすみません。 (2015年8月8日 16時) (レス) id: 2d3bfd809c (このIDを非表示/違反報告)
季紀(プロフ) - イギリスさん» 遅れてごめんなさい。イギリスさん色んな作品にコメント下しましたよね? 滅茶苦茶嬉しいです♪>-<* 頑張ります! (2015年5月24日 16時) (レス) id: 61b5a6cbc1 (このIDを非表示/違反報告)
季紀(プロフ) - ももさん» 全然大丈夫ですよ〜^-^ やっぱりアーサーはゲスじゃないと← (2015年5月24日 16時) (レス) id: 61b5a6cbc1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:kiki | 作成日時:2015年1月23日 2時