【APH】金と黒【アーサー】

黒い瞳を持つ2人 ページ1

「イヴァンは?」
「コサックダンスの修行中だって」
「嘘だな。核開発でもやってんじゃね」


国同士、そしてその側近や上司達の集う夜会。
どこか異色なオーラを放つ人々の間で様々な情報が飛び交う。

普段軍服ばかり着ていてスーツがあまり似合っていない奴が大半だ。
ギルベルトなんてその代表。

まぁ、俺は紳士だから上品に着こなせているけどな?

あ、でも個人的にエリザベータのスーツ姿はむちっとしててかなり美味しい。


「ヴェ〜、ドイツー、可愛い女の子いたー?」
「フェリ、美しいお兄さんならここに」
「「「黙れ」」」


フランシスが全員に冷たい目で睨まれる。

ぷっ、ざまあみやがれ。
アーサーは口元がにんまりと歪むのを止められなかった。

それにしても、そろそろ酔いが回ってきた気がする。
普段はひたすらパブで飲むだけなのに、こんな所でちびちびワインなんか飲むから余計にだ。

……ちょっと夜風に当たってくるか。

人々のごった返す会場を抜け、ロココ調のバルコニーへ向かう。
扉を開けると満点の星空が広がっていて少しテンションが上がった。


「忘れないで下さいよ。貴女は私のものです」


……本田?
必要はないのに、壁の近くについつい身を隠してしまう。

ふっ、諜報活動に掛けちゃこのイギリス様に勝る奴はいないぜ。


「お兄様、私はものじゃありません。自由に生きたいんです」


若い女の声。
壁の角からそっと覗く。
手すりの近くで、本田菊とピンクの膝までの丈のカクテルドレスを着た女が睨み合っていた。


「随分と生意気な口を叩くようになりましたね。誰のお蔭で今の生活があると思っているんですか?」


――うわー、出たぜ爺のどす黒い本性。
本当はあいつ滅茶苦茶性格悪いからな。

本田が女の太ももを掴んだ。


「いやっ」
「こんなに短い丈の服を着て。他の男の視線が注がれているのが貴女にも分かったでしょう? 貴女はそんなに私を妬かせたいんですか?」
「そんなことない……っ」


その言葉に偽りはないのだろう。
声が震えている。

恐らく彼女が本田菊の妹なのだろう。
アーサーは少し彼女が不憫に思えてきた。


「――分かったら、大人しくしているんですよ。良いですね」


話が終わったようだった。
本田が踵を返してカツカツと歩き始めた。

アーサーは慌てて物影に隠れたが、どうやら本田はもう一つの出入り口から会場へ戻って行ったようだった。

盗み聞きなんて知れたら格好悪いもんな。

とりあえず安堵の溜息を吐く。

仮面を外して→

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す