瞬く光 ページ32
大好きな親友。小さい頃からずっと一緒に過ごしてきた千尋。
色々あっても、出来るだけ嫌いになりたくない。
「だから、千尋がハクと結ばれて。湯婆婆だって喜ぶはずよ」
「・・・・・・ッAは意地になってるだけじゃない・・・・・・きっと、ハクだってAが来るの待ってるわよ」
「私、千尋のこと好きだから仲悪くなりたくない。ハクだってきっと時間が経てば私のことなんか忘れる」
「だから、そんなことないって・・・・・・!」
ついに千尋の瞳から涙が溢れた。私は何か見てはいけないものを見てしまったような気がして彼女から目が逸らした。
駄目だ。これ以上千尋といると私が泣いてしまいそう。早々に切り上げよう。
「千尋、怪我してるんでしょ。早く戻ってハクに治療して貰って。それから・・・・・・」
息を吸い込んだ。
千尋は涙を拭うこともせず私を見ている。
「あの時、私も千尋と一緒に川に落ちたの。それだけは千尋に知って欲しかった」
千尋が息を飲んだ。
あ、駄目だ。引っ込んだはずの涙がぐっと込み上げてきた。
・・・・・・やっぱり、いつだって主人公は千尋だ。
千尋に背を向ける。階段の方へ向かって歩き出す。赤と金の華やかな湯屋の内装がモノクロに滲んで見えた。
これ以上千尋に惨めな姿を見られたくない。彼女の視線を感じながら、階段前の壁までしっかりとした足取りで歩いた。きっと私のことを知っている彼女には強がりだって分かるだろうけれど。
やっと壁に隠れる位置に立つと、際限なく目から涙が溢れてきた。喉の奥に熱い鉄の塊がのし上がってくるような気がする。世界の終わりのような気がして、壁にもたれ掛かりながら階段を下りた。
「馬鹿だ、私」
全部私が意地張ったのが原因だし、もしかしたらまだハクと元に戻れるチャンスはあったかもしれないのに。きっとあのおかっぱを何発か殴れば気も済んだことだろう。
何度も足を踏み外す。階段を転げ落ちそうになりながら階段を足をもつれさせながら下りてゆく。切れかけの電球が瞬いていた。
どうか、この姿をお客様に見られませんように。
しゃくりながら階段を下り切った。もうこれ以上動ける気がしなくて、一番下の段の前に座り込んだ。床が冷たくて、それが余計に涙を際限なく溢れさせた。
後方から突然大きな足音がした。階段を誰かが数段飛ばしで下りて来る。出来るだけこの泣き顔を見られたくない。
こんな時に誰よと思いながら、邪魔にならないよう左へ身体を避けた。
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美音 - なんだろう…美影さんを内山昂輝さんの声で再生してしまうの… (2022年1月10日 7時) (レス) @page33 id: c6a6e435a8 (このIDを非表示/違反報告)
サリナ(プロフ) - 季紀さん» この書いた作品全てを消して悪女が出る作品を書いてください!m(__)m (2018年4月4日 17時) (レス) id: 1722f61193 (このIDを非表示/違反報告)
ミルキ(プロフ) - 感動しましたので一度この作品の削除(変換)して夢主とハクが結ばれる作品を書いてくださいませんか?お願いしますm(__)m (2018年3月28日 10時) (レス) id: 1722f61193 (このIDを非表示/違反報告)
季紀(プロフ) - 紫蘭さん» はい、してます!笑 というかばり白澤様です笑 (2017年1月23日 9時) (レス) id: e2d49320a9 (このIDを非表示/違反報告)
紫蘭(プロフ) - 間違いだったらすみません……。白澤様がどうして『鬼灯の冷徹』の白澤様にしか見えません(´;ω;`)← もしかしてモデルにしてますか!? (2017年1月21日 23時) (レス) id: 4fa9a25ace (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:kiki | 作成日時:2014年12月28日 22時