友と恋人 ページ31
歩き出して後ろからがっと肩を掴まれた。振り返らずとも、もしハクが追いかけてきてくれたのならと考えてしまう私は浅はかだろうか。
・・・・・・私はハクに「すまない、全て私が悪かった」そんなことを言わせたくて別れを突きつけたのか。いや、違う。自分がそんな女だとはないと信じたい。
「待って! A!」
声を掛けられて足並みを止めた。後ろに立っていたのは千尋だった。
彼女は泣きそうな顔をして私の正面に回った。
「A! お願い、ハクと別れないで。私が悪いの」
彼女は一気に言い切って、その後ゴホゴホと咳き込んだ。具合が悪いのかお腹を押さえている。
抜け出してきたのだろうか。
「・・・・・・何で」
「私ね、酔ったお客様に暴行されて・・・そこをハクに助けてもらったの」
「・・・・・・」
「それでね・・・・・・それで、自分でも何故だか分からないけれどキス、しちゃったのよ」
千尋はじわりと瞳に涙を浮かべた。
・・・・・・私だって泣きたいよ。
「全部私が悪いの、Aとハクが好き合ってることを知っておきながら。ハクは優しいから貴女に私のしたこと言わなかったけれど・・・・・・私のせいなのよ」
私は何も言えなかった。
だって、千尋はハクが好きでこの世界に来たんだしハクだって少し前まで彼女のことを好きだったからだ。川に溺れた時だって彼女のことばかり見ていた。
2人はお似合いだ。
「ごめんッ・・・・・・だから、私のことなんか気にしないで、ふた」
「気にしないで」
怖くて、俯いたまましか話を出来なかった。でも、千尋がハッとして顔を上げたのが気配で分かった。
こんなことを言わなければ、まだハクと元通りになれるチャンスはあるのかもしれない。だけど、もうそんなことをして取り繕うつもりはなかった。
「ハクには沢山の楽しい思い出を貰ったよ。もう、充分過ぎるかも知れない。こんな歳で言うのは変かもしれないし、大げさだけどどの世界でも1番ハクのことを愛してるよ」
「じゃあ、何で」
こんなことを話している間にも千尋の瞳には涙が溜まっていく。
どうしよう。今千尋が泣いたら絶対私も泣いてしまう。
「千尋、昔湯屋に来たんでしょ。ハク、ずっと千尋のこと覚えてたよ。私のことも千尋と重ねて見ていた。ずっとずっと、千尋を待っていた」
「ハクが・・・・・・」
「せっかく待ち望んでいた千尋が来たのにハクが貴女と結ばれなかったのは・・・・・・私が原因かもしれない」
一度言葉を切った。
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美音 - なんだろう…美影さんを内山昂輝さんの声で再生してしまうの… (2022年1月10日 7時) (レス) @page33 id: c6a6e435a8 (このIDを非表示/違反報告)
サリナ(プロフ) - 季紀さん» この書いた作品全てを消して悪女が出る作品を書いてください!m(__)m (2018年4月4日 17時) (レス) id: 1722f61193 (このIDを非表示/違反報告)
ミルキ(プロフ) - 感動しましたので一度この作品の削除(変換)して夢主とハクが結ばれる作品を書いてくださいませんか?お願いしますm(__)m (2018年3月28日 10時) (レス) id: 1722f61193 (このIDを非表示/違反報告)
季紀(プロフ) - 紫蘭さん» はい、してます!笑 というかばり白澤様です笑 (2017年1月23日 9時) (レス) id: e2d49320a9 (このIDを非表示/違反報告)
紫蘭(プロフ) - 間違いだったらすみません……。白澤様がどうして『鬼灯の冷徹』の白澤様にしか見えません(´;ω;`)← もしかしてモデルにしてますか!? (2017年1月21日 23時) (レス) id: 4fa9a25ace (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:kiki | 作成日時:2014年12月28日 22時