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「親友」の定義 ページ21

ようやく白い着物の背中が街角に消えた時、千尋が口を開いた。


「Aは、モテるのね」
「えっ……!? いや、そんなことないって! 私本田君にもフラてんだから!」


激しく首を横に振り、小学生の時のトラウマを口にした。本田君の意味深な行動は私の成長過程に強く根付いている――今となっても。どこかミステリアスな本田君に夢中だったあの頃を思い出し、私は苦く笑った。
……それに、千尋の方が皆から好かれているしね。


「本田君はほっとけばいいのよ。……ところでね、A。話が変わるんだけども」


ふと彼女の表情が真剣なものになり、私は何か真面目な話題の予期を感じ居住まいを正した。千尋は、深い茶の瞳で私をじっと見つめた。


「あのね、……Aはどうやってこの世界に来たの?」
「えっと、それはつまり」
「ほら、この世界の入り口ってあるでしょ。何故あそこにいたのか知りたいのよ」
「ああ……」


微かに残った記憶を手繰り寄せる。ファンタジックと言えなくもない時計のついた建物、トンネル、そしてトンネルの出口となる赤い塔……。
あそこを通って来たんだっけね。


「私ね、千尋に会いに来たの」


そう言うと、千尋は驚きを表情に象った。


「何で? Aはまだあの場所に住んでいるはずよね」


あの場所――千尋が引っ越す前に住んでいたところだ。そして、私のここに来る前の家があった場所。現世での日々を思い出し、溜息を吐いた。


「なんだか無性に千尋に会いたくなって、会いに来たの。電車で。でも、千尋の家は見えたんだけどどう行けば良いのかが全然分からなくて……それで、近道しようって森に入ったらここに来ちゃったんだ」
「へぇ……! 偶然ね、私も最初近道しようと思ってあの森からこの世界へ来ちゃったの。湯婆婆が呼んでたのかもね」
「呼ばれたくないよ」


本人が聞いたら絶対に激昂するであろう冗談を言って笑い合った。千尋も目を細めて口元を緩ませている。
こういう時、やっぱり千尋といるのっていいな、と思う。


「千尋は、私のお父さんがアレだったのは知ってるでしょ?」
「ええ、まぁ」
「その例のクセがね、また発動しちゃったの。今度のお父さんの奥さんは酷い人で……だから、ちょっと辛くなって千尋に会おうと思ったんだ。でも、本当に大したことじゃないの」


にこりと微笑むと千尋は心配そうに顔を歪めた。
……でも、大丈夫。多分。

(ねぇ、千尋)
(私達、ハクのことが無ければきっと良い親友よね)

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設定タグ:千と千尋の神隠し , ハク , カオナシ   
作品ジャンル:恋愛
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美音 - なんだろう…美影さんを内山昂輝さんの声で再生してしまうの… (2022年1月10日 7時) (レス) @page33 id: c6a6e435a8 (このIDを非表示/違反報告)
サリナ(プロフ) - 季紀さん» この書いた作品全てを消して悪女が出る作品を書いてください!m(__)m (2018年4月4日 17時) (レス) id: 1722f61193 (このIDを非表示/違反報告)
ミルキ(プロフ) - 感動しましたので一度この作品の削除(変換)して夢主とハクが結ばれる作品を書いてくださいませんか?お願いしますm(__)m (2018年3月28日 10時) (レス) id: 1722f61193 (このIDを非表示/違反報告)
季紀(プロフ) - 紫蘭さん» はい、してます!笑 というかばり白澤様です笑 (2017年1月23日 9時) (レス) id: e2d49320a9 (このIDを非表示/違反報告)
紫蘭(プロフ) - 間違いだったらすみません……。白澤様がどうして『鬼灯の冷徹』の白澤様にしか見えません(´;ω;`)← もしかしてモデルにしてますか!? (2017年1月21日 23時) (レス) id: 4fa9a25ace (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:kiki | 作成日時:2014年12月28日 22時

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