甘酸っぱい、これが私の青春? ページ20
「足首を捻ったんです!」
「あんたのドジで、ね」
「……」
じっと背中越しに美影さんを睨み付ける。何故いちいち嫌味を言いたがるんだろう。おぶってきてくれたことには感謝しかないけれど。
彼はそれに気が付かず、空いている方のベンチへと向かった。そしてベンチに背中を向けて立つ。
「いい、下ろすからね」
「そっとやってくださいね! そっと」
「注文が多いって」
実際、言わずとも彼は恐ろしく「そっと」ベンチに下ろしてくれた。私の足首を気遣って、ゆっくりと。たまに変なことをいう時もあるけれど、やっぱり悪い人ではないと思う。いや、寧ろいい人だ。
千尋がクスリと微笑んだ。
「本当、カオナシはAが好きよね」
「「……は!?」」
珍しく私と美影さんの声が被った。2人で千尋を振り返る。
「千尋、冗談よね?」
「いきなり何言うの」
千尋は面食らったように、私達2人を見ていた。彼女は辟易して答えた。
「いや、だって態度とか言葉とか……Aが好きだって滲み出てるわよ」
「そんなことないって!」
ぶんぶんと手を振る。この話が間違っていることは確かだ。だって、美影さんには私以外の好きな人がいる。しかも、目の前にいる千尋だ。本人から想いを寄せている相手を間違えられたら、さぞ不快な気分にもなることだろう。
誤解を解くために、賛同を得ようとしてまだ何も言っていない彼を振り返った。
「ね、美影さんもそう思うでしょ?」
美影さんは私が振り返った途端ぱっと顔を背けた。瞳は黒い髪に隠れていて見えないが、その下から覗く頬が朱に染まっている。耳まで見事に赤くなっている。
もちろんあんたなんか、という返事が聞けると思っていた私は勢い余ってえっと、とどもった。彼は相変わらず何も言わずにそっぽを向いている。そして千尋とリカさんがニヤニヤしながら私達を見守っている。
まさか。だって、美影さんは千尋が好きなはずなのよ。それはあり得ないって……え、でもこの反応は?
何だか私まで混乱して恥ずかしくなって、頬がかぁっと熱くなった。と、美影さんはそんな場の空気から逃げるようにさっと私達に背を向けた。
「僕、リカと買い出し行ってくる」
「え、顔無様!?」
「リカ、良いから付いてきて。Aは歩けないから、千尋が傍にいてあげて」
そう言い残し彼は慌てるリカさんを連れて歩いて行ってしまった。残された私はただただ呆然とする。
そんな……嘘でしょおおおおー!?
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美音 - なんだろう…美影さんを内山昂輝さんの声で再生してしまうの… (2022年1月10日 7時) (レス) @page33 id: c6a6e435a8 (このIDを非表示/違反報告)
サリナ(プロフ) - 季紀さん» この書いた作品全てを消して悪女が出る作品を書いてください!m(__)m (2018年4月4日 17時) (レス) id: 1722f61193 (このIDを非表示/違反報告)
ミルキ(プロフ) - 感動しましたので一度この作品の削除(変換)して夢主とハクが結ばれる作品を書いてくださいませんか?お願いしますm(__)m (2018年3月28日 10時) (レス) id: 1722f61193 (このIDを非表示/違反報告)
季紀(プロフ) - 紫蘭さん» はい、してます!笑 というかばり白澤様です笑 (2017年1月23日 9時) (レス) id: e2d49320a9 (このIDを非表示/違反報告)
紫蘭(プロフ) - 間違いだったらすみません……。白澤様がどうして『鬼灯の冷徹』の白澤様にしか見えません(´;ω;`)← もしかしてモデルにしてますか!? (2017年1月21日 23時) (レス) id: 4fa9a25ace (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:kiki | 作成日時:2014年12月28日 22時