知らない世界の知らない時間 ページ19
暴れると、美影さんが顔をしかめて私を振り返った。
「危ないって! 落ちるからっ」
「えー」
「『えー』じゃない! しっかりしがみつきなさい」
「はーい……」
渋々背中にしがみ付く。彼は太ももに回している腕を持ち上げ、バランスを保った。
人通りのない、夕焼け色に染まった町。自分の生まれ育った町とは全然違うこの世界で、神様におぶられて歩いているなんて本当に不思議な状況だった。街にはりめぐされた提灯に灯が灯るまでを惜しむようなこの時間は、本当に静かで美しかった。
……思えば、この時間にハクに会ったっけ?
今頃、現世で生きてる皆はどうしてるんだろう。多分、この世界に来てから半年以上の時間が経っている。向こうの世界ではもしかすると流れている時間が違うかもしれない。高校受験が終わっている可能性もある。
もし、私が向こうの世界へ戻ればこの世界での時間は神隠しとして扱われるだろう――もっとも、戻るつもりはなかった。この世界でハクと生きていきたかった。ハクも、向こうの世界に戻るつもりはないように見受けられるし。
「あ、ちょっといいかも……」
美影さんがふと呟いた。不思議に思って顔の横から彼の顔を覗き込む。
「何がですか?」
「背中に当たって気持ちいい」
「何が背中に当たるの?」
「考えれば分かるでしょ」
突き放すように言われ、私は顔をしかめた。
一体何が当たるっていうんだ。
少し考えてから――真赤になった。
「みっ……」
「何」
「美影さんのバカー!!」
「うわっだから、暴れんなって言ってんでしょっ」
足をじたばたさせると、彼は慌てふためき立ち止まった。胸が彼の背中に当たらないよう、身体をのけぞらす。
「ちょ、何その姿勢……滅茶苦茶おぶりにくいんだけど」
「変態を喜ばせないようにするためです!」
「何それひどっ」
なんだかんだ言いながら、美影さんは顔をひきつらせて歩き出した。悪い人じゃない、ということは分かっている。でも、ハク以外の人にあまり身体を触れたくないから出来るだけ胸が当たらないようにした。
町の入り口に着くと、千尋とリカさんがベンチで談笑をしていた。あまり切羽詰まった表情で待っていられても申し訳ないので、少しほっとする。2人は私達に気が付き、驚いた表情をした。
「A、どうしたの?」
「えっとね、実は……」
「ドジなこいつが転んで、仕方なく僕が運んできてあげたって訳」
簡潔に、でも何だか憎らしい調子で説明をされ少しむっとする。
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美音 - なんだろう…美影さんを内山昂輝さんの声で再生してしまうの… (2022年1月10日 7時) (
レス) @page33 id: c6a6e435a8 (このIDを非表示/違反報告)
サリナ(プロフ) - 季紀さん» この書いた作品全てを消して悪女が出る作品を書いてください！m(__)m (2018年4月4日 17時) (レス) id: 1722f61193 (このIDを非表示/違反報告)
ミルキ(プロフ) - 感動しましたので一度この作品の削除(変換)して夢主とハクが結ばれる作品を書いてくださいませんか？お願いしますm(__)m (2018年3月28日 10時) (レス) id: 1722f61193 (このIDを非表示/違反報告)
季紀(プロフ) - 紫蘭さん» はい、してます！笑 というかばり白澤様です笑 (2017年1月23日 9時) (レス) id: e2d49320a9 (このIDを非表示/違反報告)
紫蘭(プロフ) - 間違いだったらすみません……。白澤様がどうして『鬼灯の冷徹』の白澤様にしか見えません(´；ω；｀)← もしかしてモデルにしてますか！？ (2017年1月21日 23時) (レス) id: 4fa9a25ace (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：kiki
| 作成日時：2014年12月28日 22時
