自分勝手なピリオド ページ42
「……それ」
細い指先が羽織を指差す。
「返しにきてくれたの?」
「……そのつもり」
とんでもない場面を見ちゃったけれど、とは口にしなかった。思いの他、ハクは困惑の陰に嬉しそうな笑みをふっと広げた。思わぬ甘い表情に私は思わず戸惑った。
「ずっと持ってても良かったのに」
「そういう訳にはいかないでしょ」
「私とそなたの思い出に」
「……馬鹿じゃないの」
ハクは冷たくなったり優しかったり、本当にいつも私の心を掻き乱す。お願い、これ以上私を惑わせないで。もう私はハクに恋することは永遠にやめるの。
と、ハクが扉にもたれ掛かって室内を指し示した。
「せっかくだし入っていくか?」
「もう少しで皆が起きる頃だし、帰るわよ」
「そなたのために良い茶葉を入手したけど」
「――千尋のため、でしょ」
本気で部屋に入れと言っているのか? それだとデリカシーがなさすぎる。私も数回経験があるから分かることだけれど、男女が行為を為した後とは必ずむせ返るように甘ったるい香りが広がっているものだ……そこに入れと?
私は感情的になってハクを睨み付けた。ちょっとだけ泣きそうになる。ハクはようやく私の平常ではない様子を察したらしい。
「そなたは何か勘違いをしているようだけど」
「勘違いって何よ」
「……どうしようかな。顔無夫人に教える内容ではないかもしれないなぁ」
私の反応を見るように、彼にしては珍しく嫌味っぽい口調で語った。こういう挑発に乗ってはいけないんだけど、思わずカッとなってしまう。
千尋とイチャつくところを見せ付けておいて、私が美影さんと婚約したことに何の文句があるというの?
頭に血が上ってゆくのを鮮明に感じる。気が付けば、無意識に彼の顔に向かって綺麗に畳まれた羽織を投げつけていた。それも精一杯の力でだ。
「神様の癖にこっちの反応を見るみたいに女ったらしい嫌味言ってんじゃないわよ! てか元カノをヤッた後の部屋に入れようとすんな! 聞けばいつも思わせぶりなことばっかり言いやがって、その癖千尋と仲睦まじいとこ見せつけて! この前娶りたかった何だの言われて嬉しかったのだって帳消しなんだからね! 人をからかうのも大概にして、ハ ク サ マッ!」
最後は先程のハクに負けず劣らずの口調で嫌味たらしく言い、かなり驚いてぽかんとしている彼の返事を待たずずんずんと歩き出した。
もう良い。湯屋での地位を下げられようがどうしようがかまうもんか。
私は美影さんと結婚する。ハクとはもう終わったんだ。
★ハクちゃまの秘密★
おかっぱと言われると腹が立つ。
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モッケ - 本当にごめんなさい、許してください (2015年6月27日 13時) (
レス) id: 7cabc5d692 (このIDを非表示/違反報告)
星宙(プロフ) - 季紀さん» 年がら年中からかわれてたら嫌になるもん！ おかすぃくないよー♪ やっちゃった…美影さん犯罪に手を出してしまった…←笑笑 (2015年5月23日 20時) (レス) id: d32e317eb5 (このIDを非表示/違反報告)
季紀(プロフ) - 星宙さん» からかいづらいと言われて喜ぶ人も私は初めて見た♪ おかすぃー♪ ハクさんピンチだね! 美影さんやっちゃってるし! (2015年5月23日 19時) (レス) id: 61b5a6cbc1 (このIDを非表示/違反報告)
季紀(プロフ) - 朱雀@忙しす先輩さん» テスト一週間前に修学旅行(TT) ね、あてちゃってるよね笑 (2015年5月23日 19時) (レス) id: 61b5a6cbc1 (このIDを非表示/違反報告)
季紀(プロフ) - 杜さん» そこまで言って頂けて嬉しい(笑) ハク落ちになったら美影を、美影落ちになったらハクの中編をそれぞれ書く気でいます。夢主は変わりますがね(^^; (2015年5月23日 19時) (レス) id: 61b5a6cbc1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：kiki
| 作成日時：2015年4月8日 18時
