二人きり ページ35
彼は和傘をたたみ、水を払ってから店に入った。椅子を引いてくれて、カウンター席に並んで座る。私たち二人以外の客はいない。後ろでは相変わらず雨の降る音が響いていた。
「んーと……Aは何頼む?」
美影さんがメニュー表を出してきた。そして、私の体に片手を回して二人の前に広げる。つまり、後ろから抱きしめられるような格好の訳で……どうしよう。近い。むっちゃ近い。
少し高い位置から頰に息がかかってねきたりして、私は思わず身を竦めた。
「美影さん、ちか、ちょっと近っ…」
「何? チカチカ?」
「チカチカじゃなくてっ……」
「え? 聞こえないよ」
美影さんはそう言って顔を近づけてきた。多少は空間があるのに体温の熱までが伝わってくる気がする。体を引こうにも腕が回っているからそれもままならない。今更心臓が暴走し始めた。
病的な程白い頬とか、癖がかった柔らかい黒髪とか、意外と男の人らしい喉仏とか全部見える。
「レ……ンティー……」
「ん?」
「レモンティー……お願いします」
注文して何とかその場を凌いだ。でも顔は離れていったものの、腕は依然として背に回ったままだった。
「レモンティーとコーヒー 一個、お願いします」
美影さんがカウンターの奥にいる黒い影に注文した。黒い影は声を出さずに頷いて意思が疎通したことを示した。昔は怖がってばかりいたけれど最近はかなり慣れた。
「……」
美影さんの横顔を見上げる。意外と睫毛は長かった。でも、ハクみたいに曲線を描いていないから普段目立たないんだろうな。
と、美影さんが私を振り向いた。ばっちりと目が合う。恥ずかしくて目を逸らしたくなった時、彼がにこりと微笑んだ。
「どうした?」
「睫毛……長いなぁ、と思って」
「あー、そう?」
美影さんは左手の人差し指を伸ばして睫毛をなぞった。そんなことをすると目に指が入ってしまいそうで心配だ。
「何か」
「ん?」
「神様も、人間と同じようにコーヒー飲んだりするのってちょっと面白いですよね」
とりあえず危険な行為をやめさせたくて当たり障りのない話を切り出す。美影さんは目にかかった黒髪を避けて柔く微笑んだ。
「そう? 僕らも体の構造は人間と同じようなもんだよ。働きがちょっと違うだけで」
「だって、すごい力とか使えるじゃないですか」
「まぁ、それは神だからね」
それにAだって神力使えるようになったでしょ、と笑われる。まぁそれはそうなんだけど。
★ハクちゃまの秘密★
おかっぱと言われると腹が立つ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 425人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
モッケ - 本当にごめんなさい、許してください (2015年6月27日 13時) (
レス) id: 7cabc5d692 (このIDを非表示/違反報告)
星宙(プロフ) - 季紀さん» 年がら年中からかわれてたら嫌になるもん！ おかすぃくないよー♪ やっちゃった…美影さん犯罪に手を出してしまった…←笑笑 (2015年5月23日 20時) (レス) id: d32e317eb5 (このIDを非表示/違反報告)
季紀(プロフ) - 星宙さん» からかいづらいと言われて喜ぶ人も私は初めて見た♪ おかすぃー♪ ハクさんピンチだね! 美影さんやっちゃってるし! (2015年5月23日 19時) (レス) id: 61b5a6cbc1 (このIDを非表示/違反報告)
季紀(プロフ) - 朱雀@忙しす先輩さん» テスト一週間前に修学旅行(TT) ね、あてちゃってるよね笑 (2015年5月23日 19時) (レス) id: 61b5a6cbc1 (このIDを非表示/違反報告)
季紀(プロフ) - 杜さん» そこまで言って頂けて嬉しい(笑) ハク落ちになったら美影を、美影落ちになったらハクの中編をそれぞれ書く気でいます。夢主は変わりますがね(^^; (2015年5月23日 19時) (レス) id: 61b5a6cbc1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：kiki
| 作成日時：2015年4月8日 18時
