花魁以上 ページ19
美影さんは口の端を吊り上げて笑い、懐に角ばった手を差し入れた。1枚の紙切れを取り出す。
それは私が初めて実際に見るものだった。中国語で書かれているが、多分小切手だと思われる。湯婆婆は震える手でそれを受け取った。
何度もそこに書かれた数値を指でなぞってから、目を見開いて美影さんを見上げた。
「……(人1)だけで良いのかい?」
「他に何を付けてくれるっていうのさ」
美影さんは余裕の表情だった。湯婆婆は何度も紙に目を落としてから、小さく頷いて笑顔になった。そして私を振り返る。
「(人1)、吉原の花魁だってこんな値段で見請けられた者はいなかっただろうよ。あんたは幸せ者だね」
「え……?」
「美影が金額を吊り上げるまで渋った甲斐があったよ」
湯婆婆は指輪だらけの手で口元を押さえて笑った。さっきから2人が何を話していたのかは分からないが、湯婆婆が下衆いことを考えているのだけは分かる。
私は隣に立つ美影さんを見上げた。
「結局何が起こったの?」
「Aを、僕が身請けする形にしたんだよ。これで、Aの湯婆婆との契約は無効になって、僕と結婚することが出来るんだ」
「そんなに早く結婚するの!?」
「出来るだけ早い方が良いでしょ。まぁ、もうちょっと働いててもいいけどさ。僕も早くAと夫婦になりたいし」
「え……」
美影さんは微笑んで教えてくれた。
軽快に物事が進んでゆく。私は思いの他の急展開に戸惑った。待って、心の準備が追い付いてない。
私が目を大きくして硬直していると、美影さんがふっと微笑んで耳元に顔を近付けた。
「大丈夫。今は混乱するかもしれないけど、次期に落ち着くから」
「……実感が湧かない」
私は前を見つめたまま、ゆっくりと首を振った。
現実の世界では18歳以上になっているとはいえ、最後に誕生日が来たのは15の夏なのに。そんな私が結婚するなんて。
と、一つ気になることがあったので美影さんに質問した。
「あの小切手、結局何円て書かれてたんですか?」
「ああ、中国語だったもんね。五千万元って書かれてたんだよ」
「元……って中国の通貨でしたっけ。分かんないや」
「値段、知りたい?」
美影さんが、私の唇に指を当ていたずらっぽい表情で尋ねてきた。黒檀の瞳が楽しそうに踊っている。
私は少し間を置いてから頷いた。
「換算すると、一億円」
「い……いちおく?」
「驚いた?」
美影さんはクスクス笑って言った。驚くどころか、私はもう放心しそうになってよろめく。
★ハクちゃまの秘密★
おかっぱと言われると腹が立つ。
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モッケ - 本当にごめんなさい、許してください (2015年6月27日 13時) (
レス) id: 7cabc5d692 (このIDを非表示/違反報告)
星宙(プロフ) - 季紀さん» 年がら年中からかわれてたら嫌になるもん！ おかすぃくないよー♪ やっちゃった…美影さん犯罪に手を出してしまった…←笑笑 (2015年5月23日 20時) (レス) id: d32e317eb5 (このIDを非表示/違反報告)
季紀(プロフ) - 星宙さん» からかいづらいと言われて喜ぶ人も私は初めて見た♪ おかすぃー♪ ハクさんピンチだね! 美影さんやっちゃってるし! (2015年5月23日 19時) (レス) id: 61b5a6cbc1 (このIDを非表示/違反報告)
季紀(プロフ) - 朱雀@忙しす先輩さん» テスト一週間前に修学旅行(TT) ね、あてちゃってるよね笑 (2015年5月23日 19時) (レス) id: 61b5a6cbc1 (このIDを非表示/違反報告)
季紀(プロフ) - 杜さん» そこまで言って頂けて嬉しい(笑) ハク落ちになったら美影を、美影落ちになったらハクの中編をそれぞれ書く気でいます。夢主は変わりますがね(^^; (2015年5月23日 19時) (レス) id: 61b5a6cbc1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：kiki
| 作成日時：2015年4月8日 18時
