月の雫という涙 ページ1
ハクと千尋が婚約者になった。
信じたくない。でも、通りすがる人々は皆そのことについて噂していて、耳を塞いでも囁き声が聞こえてくる。皆、私を見る度に驚いたり、気の毒そうな顔をした。
いつの間にそんな話になったのだろう。元から湯婆婆様は私よりも千尋と彼をくっつけたがっていたけれど。
ハクだって昔は確かに千尋が好きだったけれど、最近ではちゃんと私だけを見てくれていた。私があんなひどい事を言って別れてしまっても、すぐに誰かと付き合いだすような人にはあまり見えなかった。
美影さんとキスしておいてどの口が話すんだって感じだけど、でもまだハクとやり直せるかもしれないという淡い期待は抱いていた。
千尋はずっとハクを愛していた。私が彼と付き合っていても、それでも変わらずに想いをぶつけていた。私は彼女の愛の深さ、大きさを軽く見ていたという事だろうか。
湯婆場様も場にいたということは、冗談でなく紛れもない事実なのだろう。
湯婆婆様は私よりも千尋が好きだ。千尋を娘に迎えようと考えているのかもしれない。いや、きっとそうだろう。そしてハクを婿養子に迎え、次世代の湯屋を２人に経営させるのだろうか。
……そうすれば、私の出る幕はない。
まだ状況もよく呑み込めていないけれど。
私は、望まずにこの世界へやって来て、そのままぼんやりと居ついてしまった。自分勝手な家族と暮らすよりも居心地が良かったから。
ハクが好きだと言ってくれて、付き合う事になった。私がこの世界で上手くやっていけたのには、ハクの後ろ盾の力の影響がかなり大きいと思う。
ハクが好きだから、ずっとこの世界にいた。でも、今はもう彼の恋人は私じゃない。１人になったのだ。
もちろん、美影さんや白澤様、沢山のお客さん達との出会いや千尋との再会もあったけれど。
……ハクと共に過ごせないのなら、この世界にいることに何の価値があろうか。
離れへ行き、ようやく共同部屋の前に辿り着いた。夜のこの時間は皆店に出ていて部屋には誰もいない。薄暗い部屋に、大草原の向こうの白い月明かりが差し込んでいた。私はしばし見惚れてから部屋に入り、布団の上で波打つ光に腰掛けた。
ぼうっと大草原の向こうを眺める。今まで考えた事もなかったけれど、この先には別の場所が広がっているのだろうか。
音のない場所にいると嫌でも腕を組んだハクと千尋が脳裏に浮かんだ。喉を嗚咽が込み上げてきて、私は声を殺して泣いた。
★ハクちゃまの秘密★
おかっぱと言われると腹が立つ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 425人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
モッケ - 本当にごめんなさい、許してください (2015年6月27日 13時) (
レス) id: 7cabc5d692 (このIDを非表示/違反報告)
星宙(プロフ) - 季紀さん» 年がら年中からかわれてたら嫌になるもん！ おかすぃくないよー♪ やっちゃった…美影さん犯罪に手を出してしまった…←笑笑 (2015年5月23日 20時) (レス) id: d32e317eb5 (このIDを非表示/違反報告)
季紀(プロフ) - 星宙さん» からかいづらいと言われて喜ぶ人も私は初めて見た♪ おかすぃー♪ ハクさんピンチだね! 美影さんやっちゃってるし! (2015年5月23日 19時) (レス) id: 61b5a6cbc1 (このIDを非表示/違反報告)
季紀(プロフ) - 朱雀@忙しす先輩さん» テスト一週間前に修学旅行(TT) ね、あてちゃってるよね笑 (2015年5月23日 19時) (レス) id: 61b5a6cbc1 (このIDを非表示/違反報告)
季紀(プロフ) - 杜さん» そこまで言って頂けて嬉しい(笑) ハク落ちになったら美影を、美影落ちになったらハクの中編をそれぞれ書く気でいます。夢主は変わりますがね(^^; (2015年5月23日 19時) (レス) id: 61b5a6cbc1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：kiki
| 作成日時：2015年4月8日 18時
