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兎は求める ページ2
(ああ、鶴見中尉殿には何でもお見通しだった。僕もAさんも、門倉部長のような人にそばにいて欲しいんだ。不器用でおっちょこちょいで頼りないけど、門倉部長みたいな、誰にでも親身になってくれる人がそばに･･･『父親』になって欲しいんだ。)
そういって宇佐美は、網走監獄でのことを思い出す。門倉には結局潜入はバレていた。しかし、門倉は終始宇佐美と和気あいあいと接してくれた。｢新人、あまり無茶するなよ。｣｢何かあったら、俺に相談するんだぞ。先輩としてちゃんと後輩の面倒見なきゃいかんからな。｣と親身になってくれた。そこに宇佐美を、油断させるように演じているような様は全く見られなかった。敵であろうと、どんな人間にも親身になってしまう･･･それが、門倉という男の本質だからなのだろう。
(ということは、鶴見中尉殿が素直になった僕に選択して欲しい道は、あれしかない。それは、Aさんにとっても『最高の幸せ』だ。そうして欲しいから、鶴見中尉殿はあのような話を･･･)
｢ねえ。Aさん･･･門倉部長がもし、Aさんの思っているような卑怯な裏切り者じゃなかったらどうしますか？｣
｢え？｣
Aは、突然の予想外の話題の転換に思わず聞き返した。
｢僕がAさんに、門倉部長はろくでもない奴だといってなんですが･･･もし、単なる僕の思い違いだったらどうしますか？｣
｢え、えとそれは･･･｣
Aは、ただただ酷く混乱した。それはつまり、本当に門倉は自分を娘のように思っていたということに繋がるからである。そこでAは、門倉と居たい思いがふつふつと強まった。
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作者名：もふもふ | 作成日時：2019年1月5日 17時
