正当化 ページ2
「い、いや、それは普通に考えてダメだろ!」
「いくら、新しい部下が可愛いからって・・・」
「私はほとんど事実であるかのように確信しております───────尾形百之助は、確実に幼い頃に母親を殺害していると。ならば、それは既に時効ではないですかな?そんな何年も前のこと、今更警察も調べようとは思わないでしょうし。」
「いや、でもなんかそれは人としてどうなのか・・・」
「彼の境遇を考えれば誠に仕方がないことですよ。ですから、今更罪を償うようなことなんて、しなくてもよいではありませんか!」
「いや、それ人殺しを正当化したも同然なんだが・・・」
「もう、どうだって良いでしょう。尾形百之助は素晴らしい射撃の腕の持ち主です。彼はこの軍になくてはならない存在です。ですから、彼が人殺しをしたからといって手放すなんてことは大変勿体無きことです。それに、『我々も』既に人殺しでしょう?」
そういって鶴見は、ニヤッと歪んだ笑みを浮かべた。2人はその問いを否定することができなかった。当たり前だ。2人はこの軍でたくさんの戦争を経験した。もちろん鶴見も。───彼らは、戦争であまたの人間を敵とはいえ、日本のためとはいえたくさん殺してきたのだから。
「我々の所業に比べれば、尾形百之助がしたであろう殺人はかよわいものです。だから、もう良いでしょう?とにかく、彼にはこの第7師団のために命をかける覚悟をしてもらいたいので、今度彼のために酒の席を用意しましょうよ!そこで、我々に心を開いてもらうのです。我々は、 君のどんな所業も受け入れる良き理解者だから安心しろと、ね?」
「え、でも私たちが尾形百之助のために自ら、個人的な場を設けたと花沢師団長に知られれば・・・」
「間違いなくお怒りになられるだろうな。自身の落胤に、必要以上に接近し何を企んでいるとな。」
「それなら心配ご無用です。近々、花沢中将殿は中央に長期で出張されるようなので。その間に、尾形百之助といくらでも外で接触できるではありませんか。」
「は、はあ・・・抜け目ない・・・」
「どこまでも用意周到だな。」
「まあ、そこまでいうならいいだろう。」
「尾形百之助の実力は、今は士官候補生の、花沢中将殿の実子であり、彼の異母弟である花沢勇作殿にも匹敵しますからな。なくすのは惜しい・・・」
淀川と和田は紆余曲折を経てようやく、鶴見のいっそ清々しいほどまでの、普通なら断固拒否するべき狂気的な企みを渋々承諾するのだった。
43人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
1 - 何かもう全てが最高過ぎます! 更新頑張ってください! (2019年4月7日 2時) (レス) id: 214b799aaf (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:もふもふ | 作成日時:2019年1月17日 23時