兎の追い討ち ページ26
｢も、もう話は終わり？なら、離して･･･｣
｢まだ、全部終わってませんよ？もう少し我慢してくださいね？｣
｢もう、いや･･･！門倉部長の話はもう･･･！｣
｢静かにしてください･･･｣
｢う･･･｣
唐突に低い声でいわれたAは、それ以上声を上げることが出来なかった。
｢ふふ。それで、門倉部長はAさんのことを娘のように思っているというのは、真っ赤な嘘！信用していない、信じられないから、父親が旧幕府軍だったことは隠していたのでした！｣
｢そ、そんな･･･｣
｢まぁ、100歩譲って土方との内通は黙ってても良いでしょう。しかし、父親のことはAさんに隠す必要はあったんでしょうかねぇ？憧れの土方についてAさんは、何でも知りたいのを分かっていたはずですよ、門倉部長は。だから、父親と土方が同志ということくらいはいうべきでした。｣
｢で、でも、教えてくれなかった･･･｣
｢ふふ。それはもちろん、そこから土方と内通していると悟られたくなかったからですよ！つくづく信用されてませんねAさんは。あははー｣
｢そ、そんな･･･もう、門倉部長は･･･私の事最初から･･･信じてなかった･･･｣
そこでAは漸く、門倉に対する不信感を認め始めた。
｢やっと分かりましたか。でも、話はまだありますよ♪｣
｢な、なに･･･？｣
｢門倉部長の正体がどうあれ、彼は小者に変わりません。だから、スパイである僕を自分の手で始末しようとせず、囚人を使った･･･返り討ちにしましたがね♪｣
｢あ、ああ･･･！｣
優しいはずの門倉のその様をAは想像して絶句した。自分の手を汚さずにやる卑怯な門倉。それは、Aの門倉に対する嫌悪感を生んだ。
｢おそらく犬童典獄にいわれてやったんでしょうが･･･上からいわれれば、門倉部長は何でも卑怯なことをしますよ！まぁ、そうすれば土方の内通者と思われにくいですからね！｣
もっとも、犬童には既にバレているはず、と宇佐美は内心付け足した。
｢未だに看守部長をしているのは、土方がのっぺら坊を狙いにここに来るのに備えているかもしれませんね･･･でも、その時はAさんはまた、長期休暇を取らされそうですね！真実は闇の中に葬り去られる･･･さて･･･もうこれくらいにしましょう。｣
そういって宇佐美はAから離れる。Aは、何とか自分の足を震えたたせながら、倒れないように踏ん張る。
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作者名：もふもふ | 作成日時：2018年12月4日 12時
