兎の高ぶり ページ14
｢あれ、門倉部長は7年看守をやっていたと聞きましたが･･･脱獄事件の際も看守をしていたのでは？｣
｢ああ、あの人は腑抜けだから別にいいやって、犬童典獄がそのままにしたんだろ。｣
｢分かるわ〜。なんか、前看守してた奴が、看守部長のくせに囚人の名前すら覚えてなくて呆れたっていってた。｣
｢そうなんですか･･･！｣
先輩看守の話を聞きながら、宇佐美はふつふつと湧き上がる高揚感を感じていた。なぜから、思ってもみないところから門倉の情報を得られそうだからだ。
｢そうなると、川田さんも看守総入れ替えに引っかからなかったってことですか？｣
Aは土方と監獄内で話したことがあり、脱獄事件の際にはショックを受けていたと宇佐美に語っていた。ならば、脱獄囚人とは少なからずに関わっているということだ。
｢ああ。それが彼女よ、脱獄事件の3日前くらい前から休みをもらっていたらしくてよ。｣
｢脱獄事件自体には関わってないから、継続で良いだろって話になったってさ。前の奴がいってた。｣
｢確かそいつの話だと、門倉部長が急に『この京都温泉割引券あげるから、たまには羽根伸ばしなさい』てきなこといって、急遽、勤務表を変えたらしい。｣
｢流石、看守部長の職権乱用だな。もはや、一種のぱわはら？だよな。｣
｢まあ、門倉部長なりの労りなんだろうがよ。なんだかんだで川田さんも楽しんで来たようだから、良かったっていってたな。｣
｢だが、帰った瞬間に憧れの土方歳三が消えて大ショックだよな･･･｣
｢あ、新人。実は土方歳三は生きていて、ここに幽閉されてたんだ。脱獄事件までな。｣
｢おま、言っていいのか･･･｣
｢今更だろ･･･町で土方歳三の目撃情報もあるし･･･｣
｢確かに。｣
｢･･････｣
宇佐美は、先輩看守のやり取りを黙って聞きながら、ぼんやりとある考えに至った。それは、自分にとても都合が良すぎる考えだった。その通りならば、Aは完全に門倉を見放すだろう。信じられなくなるだろう。
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作者名：もふもふ | 作成日時：2018年12月4日 12時
