兎を意識 ページ6
「ねぇ。Aさんはどうしてここの看守になったんですか?」
「えっと、それは・・・」
ここは、看守の休憩室。犬童に報告し終えたAは、宇佐美と共に少し休憩するようにいわれ、ここでのんびり雑談をしていた。そして、唐突な宇佐美の質問にAは思わず言葉が詰まる。なぜなら、その理由は、仕事をする上での動機としてはあまり良くないからだ。
「教えてくださいよ!」
「あ、えっと、じゃ、宇佐美さんがここに来た理由教えてくれたらいいよ?」
Aは少しでもいうのを引き伸ばすため、なんとか上手いことをいった。
「Aさんがそういうなら。僕がここに来た理由は────」
宇佐美はわざとらしく間を置いて、Aの耳元で囁く。
「Aさんに会うためですよ・・・」
「ふぇ?!」
いつの間にか宇佐美が目の前にいて、驚きでAは素っ頓狂な声を上げた。
(すごい近いんだけど・・・!しかも、いつもより低い声であんなこといわれて・・・やだ、私なにを考えて)
Aは先程まで可愛いと思っていた宇佐美を、途端に異性として意識してしまい、心臓がバクバクだった。もちろん、顔も真っ赤である。
「ちょっと、ドキッとしました?」
宇佐美が上から目線でからかうように笑う。
「そ、そんなわけ・・・!」
「そんな顔でいわれてもね・・・」
「だ、だいたい、冗談でもあんなのは・・・」
「冗談ではありませんよ。」
宇佐美が今までとは一変、急に真面目な声でいう。
「この監獄には、可愛い看守さんがいると聞いてどんな人か見たくて来ました。」
「え、そんな・・・」
「もちろん他にも理由はありますが・・・とにかくAさん会いに来たというのは本当ですよ。」
「で、でも、それが私なわけないじゃない!」
Aはその歯の浮くようなセリフに、認めたくないため、なんとか反論しようとする。
「一目で分かりましたよ。その看守がAさんだってこと。だいたい、女性はあなたしかいないじゃないですか。」
「あ、確かに・・・でも、私可愛くなんて・・・」
「可愛いですよ────僕なんかよりずっとね。僕のこと可愛いと思っているでしょう?」
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作者名:もふもふ | 作成日時:2018年12月4日 12時