山猫に一目惚れ (ページ36)

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キューピッドページ36

｢───じゃあ、今日初めて藤宮少尉を見たんですね･･･｣

｢まあな。｣

｢そして、一目惚れしたんですね！｣

｢だからそうじゃない･･･｣

｢好きなくせに！｣

｢認めてください！｣

尾形は、双子に『好き』と直接は認めはしないものの、内心はそうかもしれないと徐々に感じていた。それ以来、尾形はAに少しは気があることを仄めかしつつ、度々これについて双子に語るようになったのだった。双子は、そんな尾形をからかいつつもなんだかんだで親身になってくれた。だから尾形は、これ以来より双子に気を許すようになったのである。

だから、先の甘味処でAが心配していたこと────尾形には既にA以外の想い人がいるかもしれないこと、Aみたいなお転婆娘嫌いかもしれないこと────は、とんだ杞憂にすぎないのである。なぜなら、本人が明確に自覚していないだけで、尾形の想い人はAなのだから。

そうなると、甘味処で浩平がいいかけた｢だって･･･｣の続きがあるならば、もちろん、『両想い』の他ないのである。

｢俺たちが恋の･･･きゅーぴっど？にならないとな。なあ、浩平？｣

｢ああ。その恋を成就させるのが、2人の1番の幸せになるもんな。なあ、洋平？｣

｢おう。俺たちの動きによっては2人の運命は大きく左右される･･･｣

｢責任重大だな･･･｣

｢･･･2人の1番の幸せ？どういうことだ？｣

時刻は現在、甘味処から戻った双子と尾形がやり取りしていた大部屋────

尾形は、少し前にいった浩平の台詞が引っかかっり、疑問を口にする。その恋───かどうかは、今の尾形には分からないが、仮にそうだとしよう。その恋が成就するのが一般的に幸せなのは分かる。そこで、尾形は自身の母の様子を思い出したがまあ、それは今は置いておく。

そして、それが尾形の幸せと思うなら理解できる。しかし、『2人』とはどういうことか。それがなぜ、2人───尾形とAの幸せに繋がるのだろうか？Aは自身をどう思っているか分からないのに。とにかく尾形は、浩平の発言に首を傾げるしかなかった。