限界 ページ9
そして、彼の一方的な尋問は、着実にAの秘め事に近づいていった。
「なに、実は私も射撃場に立ち寄ってね。──まぁ、君はすでに兵舎の方に向かっていたが──そこにいた、将校殿が教えてくれたよ。君は、射撃場の騒ぎが気になって駆けつけたのだとね。」
「そ、それが、食事を抜いたこととは関係はな・・・・・」
「最後まで聞きなさい。──いくら射撃場が騒がしかったとはいえ、兵舎まではその音は聞こえまい。君は、外に出て初めて射撃場の騒ぎに気づいた。そして、気になって射撃場に向かった・・・。つまるところ、最初から射撃場に向かう予定ではなかったということだ。本来の目的は別にあった。時間帯を考えるに、外で昼食を取る予定だったと考えるのが無難だろう。違うかね?」
「い、いえ・・・全くその通りで・・・」
Aは、あまりにも的確にいわれ、ぐうの音も出ず、咄嗟に嘘をつくことも出来なかった。まさか、ここまで言い当てられるとは思わず、改めて鶴見は、恐ろしい情報将校だと認識した。そして、彼との対談は予想以上に危険だとも。
「認めるか。ならば、改めて問おう。何故、射撃場から外に食事に行こうとせず、まっすぐ兵舎に戻ったのかね?急用ではないだろう・・・?」
「え、えとそれは・・・」
すると、鶴見は急に立ち上がったかと思うと、Aの背後に回った。そして、耳元で内緒話でもするように囁く。
「射撃場でなにがあった?私で良ければ、話してみなさい。」
「つ、鶴見少尉に話すほどでは、」
「私は、君が心配なんだ・・・」
さりげなく、Aの肩に手を置く鶴見。
もう、Aはその紳士ぶりに限界であった。頭では、猫かぶっていると分かっていてもだ。
「あ、あの、その・・・」
「落ち着いて、ゆっくり深呼吸、深呼吸・・・」
もう、彼のことを話してしまおうかと思ったその刹那、
「キエエエエエエェッ!」
誰かが、執務室の扉を勢いよく開けた。
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作者名:もふもふ | 作成日時:2018年11月20日 21時