礼 ページ40
「あ、え、あの、こんにちは・・・」
「・・・・・・・・こんにちは。」
件の上等兵2人を見送ったAは、尾形に体を向けぎこちなく挨拶した。それに対して尾形は、間を置きながらも無表情で挨拶する。
(とりあえずよかった・・・ギリギリだったけど、殴られる前になんとか彼を助けられたわ!で、でも百之助さん、無表情だわ。もしかして、怒ってるのかな?・・・偶然を装って、彼のプライドを傷つけないように頑張ったけど、あからさますぎてダメだったのかしら?あ、もしかして、あんなふうにお転婆娘全開で雑巾がけしたから、なんだこの女と呆れてしまって・・・・・・)
初めて尾形が自分に向けて発した言葉が、あまりいいものではなかったため、Aは内心、自分のせいかとあれやこれやと自虐する。
「・・・・・・あの」
「──ッは!な、なんですか?」
突然、尾形に声をかけられたAは、すぐに思考の海から意識を引き上げる。
そして、尾形は次にたった一言、こういった。それは、常ならば何気ない一言。しかし、Aはその一言に、宇宙をも吹っ飛ぶような衝撃を感じた!!
「その、ありがとうございます・・・助けていただいて。」
「──はひ!ッ?」
やはり、上等兵らから尾形を助けようとしていたことは本人バレていた。しかし、Aはそんなこと気にする余地もなかった。Aはてっきり、余計なことするなと非難されると思い、どう謝罪するかしか考えてなかった。だから、予想とは正反対の礼の言葉にAは、思わず変な声をあげる他なかった。それはもちろん、心の底から嬉しいという感情が溢れ出したからともいえる。
「・・・・・・?」
「ッ!!・・・は!!ははい、どどどういたしまして!」
Aの奇声に思わず首を傾げる尾形。普通なら、顔を顰めてもおかしくない場面。しかし、尾形は顔を顰めずにただ、不思議そうに顔をコテッと傾げた。
(ふぁ?!いまのはなななんんて、か、かか可愛い──ッ!?)
そう、Aはそれに男とはいえ不覚にも可愛いと感じたため、礼の返しが不自然にどもったのであった。
「───?」
不自然に礼を返したAにまた、コテッと首を傾げる尾形。
(ま、またなんてことをッ──!え、とにかく、おおおちけ自分!)
また、先と同じように内心だけに留めているが動揺するA。
120人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ゴールデンカムイ」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:もふもふ | 作成日時:2018年11月20日 21時