花狂いとカタストロフィ - [ 短編集 ] -

0 4 ■ 屋烏の愛 / Green. ページ17

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親が無理矢理私にお見合い話を持ちかけてきた。


頭の固い両親のことだから、
どんなセンスのない男を連れてきたのかと思って
構えていたら…






「……」

「…あ、あの、阿部…、亮平…と、申します」







……何。このむさ苦しさ100%の男は。






予想を遥かに上回るほどのイモくささだった。


眼鏡に乗っかるほど長い前髪に、その隙間からじとっとした自信なさげな瞳が少しだけ見えている。


目が合うと逸らすけど、こっちが逸らすとめちゃくちゃ見てるように感じる不気味な視線。


服装も、きっと高くていいスーツなんだろうけど
おぼっちゃまです、ボクはボンボンですって言ってるようなまるでこう、センスのない感じ。






……ありえない。


絶対に断ってやる、とある意味意気込むと
親同士のくだらないビジネスの話を聞き流しながら
目の前の子羊のソテーをはぐはぐと喰らった。





親同士の戦略のためにこんっな経験0ですみたいな男と
私が一緒になれるか、と腹立たしく思って無言でいると

やっぱりずっとずっと粘着力の高そうな彼の視線が私に向いていた。






キッと睨みつけると、はわわっと逸れるその視線はものの数秒でまたこっちを見、

懲りずにまたはわわっ！と口に出して逸らすの繰り返しで。






「パパ、ママ！私あんな人無理だからね！」






家に帰って早々、センスのない首飾りを床に放りつけながら怒りをぶつけると

「何がそんな嫌なの？私達分からないわ」ととぼけた顔をされるから尚更血管が切れそうになる。







「むさ苦しいの！タイプじゃないって言ったら分かる！？
とにかく無理！絶対無理だから！！」

「困ったなあ〜〜阿部さんとももう最終決定的な話をしてるんだけど」

「何で！？本人が無理って言ってるじゃん！」






冗談じゃない！と机をバンッと叩けば

「あら、亮平くんはAのことを物凄く気に入って下さったみたいよ」なんてママからは信じられない言葉を言い放たれる。







「……今なんて？」

「向こうのご両親に耳打ちで可愛い可愛い言ってるのが聞こえたわ」

「……耳打ち…親に…いったいいくつよ」

「とにかくまた会合のセッティングしとくからね」







は？と素っ頓狂な声をあげた私に
ニコニコしながら頭の固い両親は「もう場所は決めてあるんだ」と平然と言う。



「会合なんて言い方ナンセンスね。デート(・・・)、行ってらっしゃいな」とも言われ、もう魂は抜けた。






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