ハチ

8 剛典 ページ8

『彼女、いつもあそこにいるの？』

S「いるよ。夕方ぐらいにフラーっと来て、朝方までああやって座ってる。理由までは知らないけどね。その姿が忠犬ハチ公みたいだから、みんなから"ハチ"って呼ばれてる(笑)」

そう言えば昨日のヤツらも"ハチ"って呼んでたな。

スウェイが知る限りでは、ハチがあそこに来るようになってから1年以上経つそうだ。

あの辺りを縄張りにしている彼らのグループは、最初ハチを追い払おうとしたらしい。
どれだけ脅しても怯むことなく毎日やってくるハチを、リーダーのショーキチって人が気に入って、今ではグループのマスコット的存在になっているらしい。

『それで昨日の人たち、俺たちにあんなに怒ったんだ…。』

S「アイツあんまり話さないから本名とかどこに住んでるとか全然知らないけど、今18才ってことと高校には行ってないってことだけはみんな知ってる。俺たちもみんな似たようなものだから、余計にハチから何か感じることがあるんだと思うよ。」

学校にも行かず、1日の大半をあそこで過ごしてるなんて、余程の理由があるんだろうな…。

S「俺が知ってるのはそれぐらい。ま、それだけ知ってりゃ十分だけどな(笑)もっとハチのことを知りたいんなら他のヤツに訊いた方がいいと思うよ？知ってるかどうかわかんないけど。」

『俺がハチと直接話したら迷惑かな？』

S「ハチは誰が話しかけても迷惑がったりしないよ(笑)自分を追い払おうとするヤツ以外はね。話したかったら話してみれば？他のヤツらには俺から伝えといてやるから。」

初めて会った俺にそこまで世話を焼いてくれるスウェイに感謝しつつ、今日は一旦帰ることにした。

最後まであの威圧感だけは消えなかったけど…。

9 将吉→←7 剛典

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す