【不機嫌なモノノケ庵】泡沫に響く唄【男主有】 (ページ28)

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それからあっという間に2日目はやってきた

現し世で生活できるくらいには回復して、亀薬堂に気休めではあるが薬を求めに行こうと考えたのだ

そこで二人とは合流するし丁度いい。

まぁ行かなくとも、いもり池に居れば向こうからやってくるから僕にはメリットしか無いわけだが…

立「帰ってきた時から思ってたけど、女の子じゃ無いんだ」

『女だとなめられる』

立「ま、襲われる心配もないし。気を付けてね」

『うん』

そう言えば僕、イツキが奉公人雇ったって立に報告したっけ？
…やらかした。

サーッと血の気が引いていく
物怪庵が心配だからという意味も込めて僕を預けたのに

どう言い訳しようか町につくまでの1時間をひたすら考え歩いていた。

町について感じた違和感は、和気藹々とした日常ではなく何かが起こったかのように妖怪達は一点を見つめていた事。

あれは…

芦「モジャ！」

バキッと鈍い音を立てて家に投げ飛ばされた白モフ
あの妖怪は確か果物を売ってる店の店長

僕はバサリと翼を一仰ぎして野次馬をのかす

僕の姿を見た妖怪たちが驚いたように道を開けた

「あ、あれは…！！」
「あのような方が何故ここに！」

コソコソと話すものが増える中で、静かに僕は白モフに触れた

後ろではハナエが威光を使っている
ハナエは…そんな物も使えたんだ。少し悲しかった

『流血沙汰か…これはまずいね』

芦「え…誰…？(でもこの気配…何処かで)」

僕の声に我を取り戻したハナエ

膝をつく妖怪は僕を…僕の服にあしらわれた家紋を見て、震える声でこう言った

「貴方はッッお、お許しください…！天皇陛下！！」

お許しくださいって言われても…この件について、刑を決めるのは僕じゃなく、しぃくんの勤めだからなぁ

僕は妖怪に目を向けずハナエの方をゆっくりと振り向いた。
ひらりと僕の着物の裾にあしらわれた上品なヒダが可憐に揺れる

ハナエが驚いたように僕を見ていた

『周りは怪我してない？あー…この子は怪我してた』

何となくハナエとは他人のふりをする

遠くで不機嫌なイツキの気配がしたから、またハナエはやらかしたのかと思わず小さく笑った

苦しそうな白モフを血がつくことも構わず僕の羽織でそっとくるむ

芦「悪いですよ！！高貴な方にそんな事させるなんて！！」

『勝手にそう呼ばれるだけ。気にしない。』

反論しようとしたハナエの背中に大きな薬瓶が飛んでくる。
それは不機嫌なイツキがやってきた証拠だった。