12 travel ページ12
加藤side
新幹線の席は当たり前に隣かと思えば、
俺に気を遣ってなのか
壁を作っているからなのか
通路を挟んでそれぞれ窓側だった。
まぁ、2泊するんだから時間はある。
とりあえず着くまでに
どうやって祐也との関係を聞き出すか考えよう。。
何駅か過ぎた頃、Aさんの様子を窺うと、
いつの間にか彼女の隣に座った
“イケメン若手俳優”という文言が似合う男性に
話しかけられていた。
悪いような気もしたが、
付けていたヘッドホンをそっと外し
二人の会話に聞き耳を立てた。
「えー？何で席離れてんの？本当に連れ？」
「連れっていうか、仕事の関係なので。」
どうやらまだ話しかけられて間もない様だ。
「でもさ、普通隣で取らない？
あ！…もしかして、不倫旅行とか？(ヒソヒソ)」
フッ そう思うよな。
「え？違いますよー、ふふふ。私も彼も独身ですし。
あ、こういうの勝手に話しちゃダメですね。」
はあ！？…今、Aさん何て言った？
「それくらい良いんじゃない？じゃあ、彼氏はいる？」
「居ません。だから不倫でも浮気でもありませんってー」
「ふーん？なら、この指輪は？」
「あっ、ちょっと。」
あっ！
もう一度、隣の人の影からこっそり覗くと
左手を取られていた。
「ん？サイズ合ってないじゃん。」
「それは…それより、こんな場面見られたら
彼女さんに怒られますよ？」
「俺も居ないよ？ていうか、傷心旅行中〜！ははは」
「なんか、ごめんなさい。」
「ううん。降りるまでで良いからさ、相手してよ。」
「わかりました。」
「フハッ。ねぇ、騙されやすいでしょ？
詐欺とか合わないように気をつけた方がいいよ？」
「失礼ですよー？」
「くくく、ごめんごめん。」
楽しそうに会話をする彼女は
俺の知ってるAさんではなかった。
その後の会話も気になったが
むくむくと膨れ上がる嫉妬心を鎮めるため、
再びヘッドホンを装着し、
開いていたPCのスクリーンセーバーを解除した。
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作者名：ネロリ | 作成日時：2021年5月5日 18時
