93 _connection. ページ10
_ Remus side.
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苦しそうに手当てを続けるAを見つめ続けているが、さっきから1度も目を合わせてくれない
私の苦痛を肩代わりしてくれているみたいに、満月の後はいつも君の方が苦しそうだと思う
静かに手を動かす彼が、何か喋ろうとして口を開く
「....聞いていいか」
「なんだい？」
やはり目線は上げてくれない
声色には気遣いや心配といった音が混じる
「あの日.....路地裏で何してたんだ」
「....言っても信じないよ」
やっと目があった
朝日に照らされた瞳に全て見透かされそうな感覚に襲われる
あの日の私は異常だった
自分でもよくわからないが、冷静に振り返るならあれは開心術の暴走とでもいうべきか
先天的に開心術に長けていると、意図しない声が聞こえてくるなんて割とよくある話だ
ただ一つわからないのは...
「.....君の声が、聞こえたんだ」
魔法的な絆があるわけでもないのに、一方的に遠距離で音を受信するなんて道具なしでは不可能だ
まさか場所まで合っているとは思わなかったが、単なる偶然にしてはでき過ぎている
「それで....家から飛び出してきたって...？」
「上着も着ずにね」
「俺がいなかったらどうしてたんだ...」
まったくその通りだ
何の確証もなく家を飛び出して、力がコントロールできなくなるなんて
あのときはただ必死だったんだ
冷静なんて言葉はとっくに辞書から消えていた
「...いたんだからいいじゃないか」
結果的にまた会えたのだから
もっと開心術を極めれば彼がどこにいてもわかるようになるのではなんて淡い希望を抱きながら、目を閉じて耳を澄ませる
大方治療が終わったようで、正面を向くように座り直させられた
「足は？」
「左の膝だけ」
傷に触れないよう慎重にズボンの裾をたくし上げる
傷だらけの上半身に比べると、足は全体的に損傷が少ない。今のところは
痛みで敏感になっているのか、彼の手が肌に触れるたびに体が勝手に震えてしまう
厳しい表情とは裏腹に、労るような優しい手つきで震える体を抑えてくれた
傷が元通りに修復され、足の甲に口づけられる
「....私以外の前で、そんな顔したらダメだよ」
「どんな顔？」
「...知らなくていい」
ようやく眉間の皺がとれたと思ったらこれだ
その慈愛に満ちた優しい表情で、君は今何を考えている
それが、私のことだったらいい
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作者名：yamanarashi | 作成日時：2021年1月10日 19時
