88 _monologue. ページ5
_ Your side.
_
歳をとると涙脆くなるっていうけど、それにしても酷い
特に何かあったわけでもなく、極度の緊張状態から解放されて気が抜けてしまっただけの気もする
「見てあげようか？」
「自分でもわからないのに、
見たってどうしようもないだろ。」
「そうかな....
私は、君に聞きたいことがまだ沢山あるよ」
都合の悪い事実から逃げてるだけだ
自分の中で整理がついてない事柄を見えない場所に押しやるのは良くない癖だとわかってる
ただこればかりは、俺ではどうしようもない
好きでこんな体に生まれたわけではないのだから
ベッドに腰掛けていたリーマスが徐に上体を後ろに倒した
「私が寝てしまう前に話しておいて」
「...話すったって」
「全部だよ、まだ聞いてないこと」
静かな呼吸音と共に彼は目を閉じた
それで聞こえてないフリでもしているつもりなのだろうか
電気もつけずに寝そべっていたら、彼なら本当に寝てしまいかねないな
「話すことね...」
隣に体を倒して天井を見つめる
彼に話せるような内容のものなんてあったかな
相変わらず目を瞑ったままの横顔を見やる
「....女の子に会ったんだよ、
まだほんの...何才かは聞かなかったな
名前がリリーって言うんだ
すごい偶然だよな...」
別に珍しくもない名前だが、人間を避けてきた俺にとっては数少ない大切な仲間の名前だ
今頃どうしてるかな
ちゃんと学校には、行けるのだろうか
「他に碌なやつがいなかった
仲間のトーマスが本当使えなくてさ
使えなくて
殺したんだ
もう助からなかった
俺が上手くやれば、連れて帰ってやれたのかな
助けようとしたときには遅かった
まだ敵がいたのも気づかなくて、
屋敷中が血生臭くて鼻も利かないし
不注意だったよ、あれはよくない
捕まったせいで、杖も転がった
母さんの杖だって、覚えてたんだ"アイツ"が
俺が、母さんに似てるって
それで、噛まれて...
そうだな、羨ましかったのかも
リーマスのお父さんがあったかくて、だからそんな風に笑えるんだって
なんでそんな、いい男なんだよ....おまえ、
俺なんか、えらんで、...どうすんだ....
「もういいよ」
溢れそうだった涙を拳で拭った
「寝てろよ、」
「聞き捨てならなくてついね」
彼の温かい手が目元に触れる
「愛してるよ、A」
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作者名：yamanarashi | 作成日時：2021年1月10日 19時
