97 _premonition. ページ14
_ Remus side.
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窓際に立ち並ぶ大小様々な空き瓶の数々
彼を囲むようにして散らばった薬包紙と水溶液が異様な雰囲気を醸し出している
「....また作ってるのかい？」
作業に没頭していたらしいAが顔を上げた
今しがた中身を作り終わった透明の瓶に蓋をして、窓際にまた1つ追加される
「こいつらの調子が悪いんだよ」
「そう...」
中身の状態で天気が予測できるというストームグラスの反応が悪いらしい
中には透明の液体が入っていたはずだが、中身が固まってどれも刺々しい結晶で埋め尽くされている
「嵐でも来るみたいだね」
「嵐で済めばいいけどな...」
表情から察するに、かなり深刻な悪天候が予想されているのだろう
彼の予測は悪いものに限ってよく当たるから、用心しておいたほうが良さそうだ
「リーマスは、大丈夫なのか？」
「いつも通りだよ」
なんともないように肩を竦めてみせる
何を隠そう、今夜は満月だ
おかげで気の利いた返しも思いつかない
「念のため、明日には場所を変えよう。
ここも安全じゃない気がする」
「君が言うなら、仕方ないね」
あの日
洞窟の底で姿をくらませてから、今日まで2人で上手くやってきた
イギリス中を旅しながら、拡大呪文を使って宿を確保したり、満月の夜を森の中でやり過ごしたり
何度か危うく見つかりそうにもなったが、ここまでなんとか捕まらずにいる
こんな気の抜けない立場に追いやられてはしまったが、今の生活もなかなかに楽しい
行く当てのない旅というのに一種の憧れもあった
どうにかしてシリウスの無実さえ証明できればといったところだが、それ自体に大きな危険が伴うのもまた事実だ
未来に不安がないわけではないが、君と居ると危機感が薄れるのかもしれないな
今も呑気に工作中の彼の隣に腰を下ろす
「ティータイムでも御所望かな？」
「そうしようか」
いつ限界がくるかもわからないはずの生活をしているのに、ゆったりと穏やかな時が流れている
時間の感覚を失いそうになりながらも、あるがままを享受できるのは年の功とでも言うべきか
もう何度目かもわからない移転を決めたその日
その日から、時計の針は再び動きだしていた
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作者名：yamanarashi | 作成日時：2021年1月10日 19時
