2人の仕事＊畳の楽屋＊5 ページ9
目黒side 続き
タクシーは、家の前に着いたけど、
俺の肩にもたれかかったまま、びくともしない。
しばらく、佐久間くんを優しく揺すってみたけどだめで、
待ってくれてた運転手さんに、お礼を言って、
佐久間くんを抱き上げる。
....佐久間くん？ちゅーしてくれるんでしょ？
お姫様抱っこで、
マンションの入り口を通ると、
エレベーターのボタンを押して、彼を抱え直す。
軽い。前よりも更に。
明日は、栄養がとれて、
ガッツリしたもの、食べに行かなきゃ。
“佐久間くん、明日、何食べたい？”
誰とすれ違うか分からないから、心の中で、呟いた。
“明日頑張るから、俺のこと、見ててね？”
「すー...」
なかなか降りてこないエレベーター。今、何階にあるんだろ。
しばらくエレベーターの表示に気をとられていたら、
おっきな目に見つめられていた。
「あれ、佐久間くん、起きちゃった？」
佐久間くんの両腕が、俺の首に回ってくる。
えっ！
「佐久間くん？ だめだめ、まだ部屋じゃないの。
...んっ....」
満足した様子で、佐久間くんは、
首に手を回したまま、目を閉じた。
「........」
「ん....これで、明日は、だいじょぉぶ、だ、よ？....め.....すー、」
「....ありがと。」
明日は、大丈夫なんだって。
佐久間くんに言われると、
本当にそんな気がしてくるから、不思議だ。
あ、やっとエレベーターきそう。
「...部屋入ったら....もっかいしてくれる？」
目をつぶったままの佐久間くんが、
少し、笑った気がした。
end
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作者名：Aries | 作成日時：2020年5月23日 23時
