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「俺、割と美術館とか好きなんですよね。非現実的っていうか、自分にはない感性を感じられるから」
翔さんの隣に並び、館内を巡っていれば、不意に絵画を見ていた翔さんの視線が私の方に向いて、パチッと目が合った。
その瞬間、さっきから美術品を見つめる端正な横顔ばかり見ていた自分に気が付いた。
翔さんの横顔が綺麗で、見惚れていたなんて口が裂けても言えない。
楽しみ方、完全に間違えてるよ私。
でも翔さんの綺麗な顔は何度見てもドキドキするほどで、全く見飽きない。ずっと眺めていられそう。
「翔さん、絵とか得意なんですか？」
「それがまあ、その才能はゼロなんですよね(笑)」
「えっ？」
「全く絵心ないんですよねぇ、俺。だからそういう才能を持ってる人に憧れちゃいます」
ははって可笑しそうに笑いながら言う。翔さんの意外な一面を知れた。
絵心ないなんて、ちょっと可愛いかも。
何でもそつなくこなせそうに見える翔さんにも、不得意なことがあったなんて。
「そんなに下手なんですか？(笑)」
「あはは、はい。自分では下手だと思ってなかったんですけど、学生時代美術の時間に画伯だ！とか、からかわれた思い出があります。ちょっと、いやかなり傷つきましたね」
「ええ、そうなんですね。翔さんの絵見てみたいかも」
「いや、お見せできるほどの腕じゃないですのでご遠慮ください(笑)」
「そう言われると逆に気になりますよ。ふふ、だって画伯だって言われるほどの腕なんですよね？」
少しからかい半分でそう言えば、翔さんは「絶対笑わない自信があるのならいいですけど…Aさん、絶対に笑いますよ」と少し拗ねたような、お茶目な顔して言った。
そんな翔さんが何だか可愛くて、「絶対笑いません！」と強く言えば、「また今度の機会にでも」と翔さんはフハッて楽しそうに笑った。
“また今度”
その言葉の重みが例え軽いものだとしても、その言葉を“約束”と受け取ってもいいですか？
私は器用じゃないから、あなたの言葉をそのまま真に受けてしまいます。
冗談でも、嘘でも、あなたの言葉に一喜一憂してしまいます。
あなたの楽しそうに笑う横顔を見ながら、私はあなたの笑顔の理由になりたいと強く思った。
それ以上はありません、きっと。…きっと、そうだったんだ。
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作者名：妃紀
| 作成日時：2018年12月2日 19時
