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智くんが席を外している間、改めて自分で色々と考えてみたけれど、やっぱりよく分からないままだった。
“幼馴染”という単語だけじゃない意味があるのだろうけど、単語自体が持つ意味以外に、何が隠されているのかがこれっぽっちも見えない。
そんな中、智くんの言葉で、余計に分からなくなってしまった。
潤くんの気持ち。気持ちって具体的に何？
「気持ちって、どういうことなの？」
「俺には絶対分かんないこと」
「ん？」
「逆に言えば、Aちゃんだけしか分かんないことだと思う」
何故か智くんは、ふにゃふにゃと顔を緩ませ、楽し気にそう言った。
分からないから智くんに相談しているのに、俺には分からないって言われる始末。
挙句の果てには、私にだけしか分からないものらしい、と。どこか意味深な言葉を掛けられた。
これじゃあいつまで経っても埒が明かない。
深くは考えない方が良かったのかもしれない、と後悔した。
「何でもない」という潤くんの言葉を、その言葉通りに何でもなくしてしまえば良かったのに、ここまで考えてしまうと、ムズムズしてしまう。
答えが分からないまま放置するのは嫌な性分。気になったら、とことん掘り下げたい。
「なんかこの前、潤くんの態度がちょっと変だったんだよね」
「変？」
「うん。いつもと違った」
考え過ぎなのかもしれないけど、昔からずっと一緒にいた潤くんの些細な変化には敏感だ。
“女だろ？お前”
家まで送ってくれると言われた駅でのシーンが、頭の中でフラッシュバックされる。
潤くんらしくない言葉が印象的で、頭の端っこにこびりついていた。
異性の枠を感じたことが今までになかったせいなのか、“女”としての私に掛けられた言葉に過剰に違和感を抱いた。
あの日は言葉通りに、家まで律儀に送ってくれて、「じゃあな」と素っ気なく別れの挨拶を残して潤くんはすぐに立ち去った。
私に背を向けて遠ざかる潤くんの後ろ姿は、いつの間にか立派な“大人の男”に変わっていたことに今更気が付いた。
潤くんって意外と体格しっかりしてるんだなって、遠ざかる背中を見ながら、ぼんやりと思った。
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作者名：妃紀
| 作成日時：2018年12月2日 19時
