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「そういえば、あれから翔くんとはどうなの？」
「えっ？翔さん？」
いきなり話が転換して頭がこんがらがる。
だけど智くんは、やけにニヤニヤとした顔で話を続けた。
「ふふ、デートとかしたの？」
「デート…って呼べるのか分かんない」
デートの内に入るのか入らないのか分からない距離感だと思う。
いや、ただご飯を食べに行っただけなんだから、デートなんて呼べないか。
そもそも翔さんは私を“友達”として見ているから、デートの枠から外れてる。
そのくせ私はデート気分で浮かれちゃっていたけど、この行為をどう思おうが、個人の自由だ。
個人で完結するなら、思い込みでもいいじゃない。
…なんて、気分を落ち込ませないポジティブさだけが私の取り柄だと思う。
「ご飯食べ行ったの？」
「うん」
「仕事帰り？休みの日？」
「仕事帰り。だからデートじゃないよね」
翔さんにしてみれば、ただの友達の付き合いでしかない。
それでも私は、翔さんに会いたいって思う。
そして翔さんに、私に会いたいって思ってくれることが何よりも嬉しいから、友達でもいい、と気持ちを押し殺す。
きっとこの距離感が、一番傷つかないと分かっているから。
これ以上距離を縮めたら、ダメなんだ。
「あ、日曜に会う約束してる」
ふと思い出した予定。電車で初めて会ったときに交わした約束。
友達になってから、初めて休みの日に翔さんに会う。
「日曜って…あ、イブ前か」
智くんの言葉で気付いた。翔さんと約束している日は23日だから、クリスマスイブ前。しかも日曜日。
考えてみれば、この日ってクリスマスデートするカップルが多そうだなぁ。
24日は月曜日だけど、代休で休みになってる。でも、クリスマス直前の日曜日だ。
「デートのお誘いなんじゃない？それ」
智くんがニヤニヤとした顔で見つめて来た。今日は終始ニヤニヤしている智くん。
ふにゃふにゃした笑顔の方が好き。
「えっ！違う違うっ！普通にご飯行くだけだよ」
「え〜、翔くんはデートのつもりで誘ったのかもしんないじゃん」
「絶対それはないって！」
「絶対なんてないよ。翔くんの気持ちは翔くんにしか分かんないでしょ？」
オシャレして可愛い格好で行きなよ、と相変わらずニヤけた顔で智くんは言った。
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作者名：妃紀
| 作成日時：2018年12月2日 19時
