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「…A」
隣に座る潤くんが私にだけ聞こえるような声で、私の名前を呼んだ。
その声のトーンに、多分余計なことは訊くなって伝えているのは分かる。
分かるけど、分かってるけど…
「…友達、です」
目の前の二宮さんと目を合わせ、私はそう答えた。
「ふふ、ふーん…友達、ね。翔さん良い人でしょ？」
私の答えに、どこか引っかかるような物言いで返す二宮さんに、少々の違和感を覚えたけれど、「はい、非の打ち所がないくらいの良い人だと思います」と返事をした。
「好きなんだ？」
「へっ！？」
いきなり飛んできた質問に、大げさに声を上げてしまった。想定外の返し。
だって、そんな、直球過ぎる。遠回しな言い方なんてせず、どストレート。
あたふたと動揺してしまった私に対して、二宮さんは「そっか、好きなんだね」とふふっと可愛らしく笑った。
え、怖い。二宮さんって見透かす力がすごい。
分かりやすいってよく言われるけど、こんなにもすぐに気持ちを言い当てられるほどには、私は分かりやすくはないと思う。
二宮くんとはまだ出会って数分。そんな相手にまで気持ちを悟れるなんて。
二宮さんって透視能力か何か奇才なものを持ってるの？
本気でそんなことを思ってしまうほど、見事に図星を突かれた。
「翔さんイイオトコでしょ？俺的にナンバーワン優良物件」
「優良物件…？」
「うん、どこを切り取っても欠陥なし(笑)俺が女だったら確実に惚れてた自信あるよ。だってあんなにもイイオトコいないから」
どこか誇らしげに、んふふっと楽しそうに笑いながら、翔さんのことを話す二宮さん。
何だか、私がイメージしていた二宮さんとは違った。
それは悪い意味ではなく、いい意味で。
人聞きが悪い言い方かもしれないけれど、もっと憎たらしいような、冷徹な面があるのかもしれない、と思っていた部分があった。
勝手な想像に過ぎないけど。
だけど考えてみれば、彼は翔さんの友達だ。
真面目で、誠実で、素敵な翔さんが大切に想うほどの相手が、素敵じゃないわけない。
翔さんも二宮さんのことを話すとき、楽しげだったことを思い出した。
二人は互いに互いのことが好きなんだ、と。
二人の関係性なんて然程知らないのに、直感的にそう感じた。
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作者名：妃紀
| 作成日時：2018年12月2日 19時
