＃11.ブラックコーヒーと氷温 ページ20
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それから潤くんと二宮さんと、ビルの６階にあるカフェに入れば、４人掛けのテーブル席に案内された。
何となくの流れで腰を下ろせば、私の隣に潤くん、目の前に二宮さんという配置になった。
座ってすぐに、メニュー表を手に取った潤くんが「先に見ていいよ」と私に手渡してくれた。
だけど、メニュー表は一つしかないから、二宮さんにも見えるようにそれを広げようとしたら、「あ、俺ブラックコーヒー一択だから。Aちゃん見ていいよ」と言われた。
可愛い顔してるのに、ブラックコーヒーなんだ。キャラメルマキアートみたいな甘い飲み物を飲んでそうなのに。
と余計なことを思いつつ、メニュー表に視線を落とした。
何にしようかな、と思いながらも、パッと最初に目に留まった「ハニーカフェオレ」に決め、潤くんにメニュー表を渡せば
「俺はブレンドコーヒー」とすぐに品を決定し、呼び鈴で店員さんを呼んで、潤くんがパパっと品を注文した。
「あの…二宮さん」
店員さんが去り、少し経ってから遠慮がちに切り出せば、ん？と目の前の二宮さんが首を傾げた。
いざ訊こう、としてみても、どうやって訊き出せばいいのか分からない。
それなのに、考えるよりも先に口が動いてしまった。
単純に、翔さんとの関係、奥さんとの関係を知りたいとしても、ほぼ初対面の相手に、ダイレクトに踏み込まれたら、怪訝さを拭いきれない。
後先を考えずに切り出した私の言葉の続きを、ん？と穏やかな顔をして待つ二宮さん。
「…翔さん」
「え？」
早く何か言わなきゃ、と焦って、口から出て来たのは“翔さん”というワード。
そのワードを聞いた二宮さんは、不思議そうに少し目を丸くした。
だけど、数秒後には私の言いたいことをまるで理解したかのように、「翔さんのこと知ってるの？」と私に投げ掛けてきた。
“翔さん”と彼の唇が動いた。
彼は翔さんのことを私と同じように“翔さん”と呼ぶ。
だから二宮さんが翔さんの友達であることはハッキリと確信できた。
「翔さんね。俺の友達だよ。Aちゃんも知ってるんだ」
さっきの投げ掛けに対して、うんともすんとも答えられずにいれば、二宮さんが続けて口を開いた。
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作者名：妃紀
| 作成日時：2018年12月2日 19時
