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「日曜でも大丈夫ですか？土曜はちょっと用事があって…」
「はい！日曜大丈夫です」
「じゃあ日曜に」
そう言って、ふふっと少し笑った翔さんに、つられて私も笑顔になる。
二人で顔を見合わせて笑ったのが、何だか照れ臭くて、恥ずかしくて、甘酸っぱくなる胸の内。
こんな気持ちを抱くのは、久しぶり。
だけどこんな気持ちを抱くのが、まだ少し怖い。
翔さんを好きになるのが、怖いんだ。もうとっくに好きなんだけど。
感情に自制を掛けずに、翔さんを好きになったら、周りが見えなくなりそうで、これ以上は進めない。
進めない、とストッパーを掛けているのに、すぐにでも外れそうになる。
「Aさん？」
「…へっ？」
不意に隣に並んだ翔さんが、下から顔をグイッと覗き込むようにして、顔を近付かせてきた。
パチリ、と交差する視線。二重の大きな瞳に見つめられて、バクバクと鼓動を速める心臓。
「何かありましたか？」
「え、何かって…」
「今日はちょっと元気がないように見えて、気になって…」
翔さんは、些細な仕草に敏感だ。今考えていたことが、顔に出ていたんだ。
「何かあったのかなって…」
多分それは単純に、優しい翔さんの気遣いの言葉。
だけどその言葉を言わせているのが、自分のせいだってことには絶対に気付かない。
何の飾り気もなく、自分の気持ちに真っ直ぐで、素直な翔さんだからこそ、ずるいと思う。
「え、私バリバリ元気ですよ！」
あははって、無駄に笑いながらそう返せば、私とは対照的に「俺に言いたくないことですか？」と翔さんは哀しい顔をする。
無理に笑って誤魔化す私には、すぐに気付いてくれるのに。
そんな哀しい顔をしないで。心配そうな目で私を見つめないで。
「あ、今日久しぶりに仕事でミスしちゃったからかなぁ…でも全然落ち込んでないですよ！だから気にしないで大丈夫です」
言えるわけないよ。言ったら、翔さん困るでしょう？
あなたのことで悩んでいるなんて知ったら、あなたのせいでこんな気持ちになっているなんて分かったら。
これ以上言及しないで、という気持ちを込めて、適当な嘘を並べて誤魔化したのは、精一杯の強がりだから気付かないで欲しい。
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作者名：妃紀
| 作成日時：2018年12月2日 19時
