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乗り換えのホームに着いて、電車が来るのを待つ。
さっきの女の人とはどういう関係なのかな、と気になるけど訊けない意気地なし。
本当は今すぐに訊きたい気持ちでいっぱいなのに。
だってもしも“彼女”だって言われたら、私どうするの。
反対に“ただの会社の人”だって言われても、この気持ちのちっぽけさに笑う。
どんな答えが返って来たとしても困るから訊けない。
けどやっぱり気になるという矛盾さにウズウズしている。
結局ウズウズした気持ちを抱えたまま来た電車に乗って、空いていたつり革に掴まって電車に揺られた。
「今度ご飯、行きません？」
隣に並んだ翔さんが、ふとそう声を掛けてきて、思わず「えっ！？」と大げさな声を上げて驚いてしまった。
そんな私を見て、不思議そうに目を丸くしている翔さんが、少しドギマギしているのが見えて
「あ、すみませんっ！ぼーっとしてて驚いちゃいました」とそれっぽい言い訳をして謝る。
無理があるような言い訳だけど、素直に気持ちを言えるわけない。
ご飯の誘いをしようかどうか迷って過ごしていたから、翔さんからのこのお誘いは嬉しい。
嬉しい声掛けに、大げさに反応してしまったんだ。
「Aさんって土日休みでしたっけ？」
「あ、はい！そうです」
「来週の土日、どちらか空いてたりしませんか？」
来週の土日。
土曜日は友達との約束があって、日曜は潤くんが誕生日を祝ってくれる予定がある。
「ごめんなさい、来週はちょっと用事があって…」
「あ、いいえ！全然大丈夫です！…じゃあ…再来週は？」
控えめな切り口で、私の顔色を窺うような表情を浮かべる翔さんにそう訊かれ、「再来週なら空いてます！」とすぐに返せば
私の言葉を聞いた翔さんは「ホントですか！」とぱあっと嬉しそうに笑った。
何でそんなにも嬉しそうなの？
翔さんの言動に一喜一憂したり、翔さんが嬉しそうに笑うだけで、グングン期待値が上がっていく。
翔さんはきっとそんな私に気付かない。気付いて欲しい、と心の底で思ってしまっていた。
日に日に、欲張りな自分が顔を出す。
私を欲張りにしているのは翔さんだって、気付いて欲しい。
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作者名：妃紀
| 作成日時：2018年12月2日 19時
